北朝鮮の金日成主席の生誕100年を半月後に控え、電力事情がさらに悪化している可能性が出てきた。北朝鮮では停電は日常茶飯事だが、プロパガンダの道具であるはずの海外向け放送すら、満足に電波を出せない状況に陥っているようなのだ。
世界に残る数少ない「プロパガンダ放送」
停波が相次いでいるのは、北朝鮮が海外向けに行っているラジオ放送「朝鮮の声」。かつては「平壌放送」「朝鮮中央放送」といった名前でも知られていた、国内で一般的なAMラジオ放送に使われる中波と呼ばれる帯域以外に、短波と呼ばれる帯域を使って、朝鮮語以外にも日本語、英語、中国語、ロシア語、ドイツ語、フランス語、アラビア語、スペイン語で「労働新聞ダイジェスト」などの「官製情報」や発信するほか、金日成主席や金正日総書記を称える音楽を流している。世界に現存する、数少ない「プロパガンダ放送」のひとつでもある。大半の言語では、1時間の番組を1日数回、複数の周波数で放送している。複数の周波数で放送する理由は、短波の場合、帯域によって電波の「飛び具合」が違ってくるからだ。
東アジア各国の放送のリスナーでつくる「アジア放送研究会」の掲示板に寄せられた情報や、北朝鮮のIT情報を集めたウェブサイト「ノース・コリア・テック」の情報を総合すると、異変が目立ち出したのは2012年2月中旬~下旬頃。例えば北米向けの英語放送が始まってから20分後に突然電波が止まったり、フランス語放送では、音楽が流れている途中に、予定よりも5分早く放送が終わったりした。
日本語放送も同様で、放送の途中で電波が途切れるのはもちろん、放送回数や周波数の数が、突然減ることもあった。
北朝鮮は、自国民が資本主義諸国の放送から情報を得るのを防ぐため、韓国などのラジオ放送に対して妨害電波を出していることで知られている。この妨害電波も、一時期不安定になっていた事が確認されている。