自民党内から、「これでは自民党も民主党も同じだ」と嘆き節が出ている。自民党が郵政民営化見直し法案を総務会で正式了承したのだ。民主党は以前から見直しを求めていた。
郵政民営化を掲げる当時の小泉純一郎首相のもと、2005年に自民党が圧勝した「郵政選挙」はいったい何だったのか。元自民党の議員からも「民主党と自民党は同類です」と声が上がっている。
小泉進次郞衆院議員も、見直し法案了承に反対
自民党は2012年3月27日、総務会を開き、公明党と合意した郵政民営化見直し法案を了承した。民主党と国民新党は、以前から見直しを求めており、ようやく自公が応じる形だ。民主党は自公案に賛同する姿勢を示している。
総務会では、小泉政権時代に要職を務めた中川秀直・元幹事長と菅義偉・元総務相、さらに小泉元首相の次男、進次郞衆院議員が反対の声を上げたが、執行部は「全会一致で了承された」と押し切った。
「(自民党は)民主党と同じだ」
中川氏は総務会後に会見を開き、自民執行部や見直し賛成派をこう批判した。選挙で民意を問うことなしに、郵政民営化という基本政策を転換するようでは、「民主党と同じだ」と述べた。「自民党の終わりの始まりになる」とも警告した。
民主党と同じ政策(郵政民営化見直し)をとるだけでなく、基本政策転換を選挙抜きで行う姿勢そのものも同じになってしまう、というわけだ。
谷垣禎一・自民党総裁らが、消費税増税を訴える一方で、民主党が進める消費増税には反対する理由は、まさに「選挙で民意を問うことなしに基本政策を転換」する民主党がけしからん、という理屈だ。民主党はマニフェストで増税をうたっていなかったし、むしろ増税なしで財源は生み出せる印象を与えていたではないか、というわけだ。
中川氏は、同じ理屈を使って自民党執行部の郵政民営化見直しを批判した形だ。
自民党は民主党のマニフェスト違反を批判できない
元自民党議員の山内康一衆院議員(みんなの党)も、郵政民営化見直しに関してブログで古巣へもの申した。山内氏は、2005年の「郵政選挙」で自民党公認として初当選していた。
「(郵政選挙時に)郵政民営化推進を訴えた自民党議員は、どんな思いで国会で活動しているのでしょうか。恥ずかしくないのでしょうか。特に感慨もないのでしょうか」
として、自身は依然として民営化は「必要と思っている」と書いた。
さらに、これでは自民党は民主党のマニフェスト違反を批判できないと指摘した上で、
「消費税増税でも、郵政改悪でも、民主党と自民党は同類です」
と断じた。
政策については、両党間の「違いはよく分からない」との指摘が以前から出ている。毎日新聞は1月27日付朝刊の社説で、消費税増税への対応などに触れ、「再三指摘してきたように、このまま総選挙に突入しても、民主党と自民党との違いは有権者にはよく分からない」と評した。
3月26日付朝刊で日本経済新聞が報じた世論調査結果によると、政党支持率は、自民26%、民主24%とほぼ横並びだった。無党派層は、両党を上回る28%で、「無党派層が主要政党を上回ったのは調査開始以来初めて」だ。
「民主党と自民党との違いがよく分からない」人たちが、無党派層の数字を押し上げているようだ。