情報を得た先が、野村の営業担当社員?
もう一つの逆風は公募増資を巡るインサイダー疑惑だ。証券取引等監視委員会は3月21日、公表前に入手した国際石油開発帝石の公募増資情報をもとに同社株式を空売りし、利益を得たとして、中央三井アセット信託銀行に課徴金を課すよう金融庁に勧告した。
問題は、中央三井に増資情報を流したのが、増資事務を中心になって担う「主幹事」の立場にあった、野村HD傘下の野村証券だったことだ。情報提供者は現行法令で処分対象とならないことなどから監視委は野村と発表していないが、「野村で間違いない」と見られており、各紙とも報道している。
とりわけ問題なのは、中央三井のファンドマネジャーが情報を得た先が、野村の営業担当社員だったことだ。野村の増資担当部門から情報が遮断されていなければならないはずの人物で、野村の信用失墜につながりかねない。
増資事務などを担う投資銀行部門と、株の売買などを投資家に勧める営業部門は世界的に「チャイニーズウォール」(万里の長城)と呼ばれる壁を築かなければならないとされる。チャイニーズウォールをめぐる社内情報管理は業界団体である日本証券業協会の自主ルールでも厳格に定め、破れば最大5億円の過怠金の支払いなどを迫られる。日証協にルール違反と認定される事態になれば、野村の信用度に与えるダメージははかりしれない。4月から営業のエース、永井浩二氏が野村証券社長に昇格し、巻き返しを図ろうとするタイミングだったが、二つの逆風は重荷になりそうだ。