尾崎豊の代表曲を替え歌にして熱唱
埼玉大学は1949年、文理学部と教育学部の2学部をもつ国立大学として発足した。2011年5月時点で学部生7461人、大学院生1088人が学び、うち約3割は女子学生だ。学生数では教育学部が最も多い。
今回の「留年式」は、学生による自主的な試みだ。埼玉大学広報に取材すると「大学の公式行事ではないので、コメントは差し控えたい」とのことだったが、「卒業式をパロディーにして留年という『現実』を笑い飛ばそう」という学生のユニークな発想に、学長が柔軟に対応して「式辞」を寄せるあたり、埼玉大の自由な校風が想像できる。
こんな場面もあった。ミュージシャン・尾崎豊さんの代表曲「卒業」を替え歌にして合唱したのだ。実際の歌詞にある「ひとつだけ解(わか)ってたこと、この支配からの卒業」との部分を、
「ひとつだけ解ってたこと、今年4月からの留年。来年こそは卒業」
と変えて笑い合った。式の最後にも、大学の校歌をわざわざ短調のメロディーに直して全員で斉唱。本来なら力強く響き渡るであろうサビの「埼玉大学、埼玉大学わが母校」の部分の歌声が、何ともうら悲しく会場内に漂った。
式終了後、留年生のひとりは「卒業式で友人を見送った後、この会場に来ました」と話した。はかま姿の男子学生は「めでたく5年生に進級しました」とコメント。一方で別の学生は「やっぱり卒業はしたいです」と本音をのぞかせた。どの顔も落胆の様子はなく明るい表情だったが、来年の春は「卒業式」で笑顔を見せられるだろうか。