年金倒産「可能性はある」
厚生年金基金は、企業独自の企業年金積立金に加えて国の厚生年金の一部を代行して運用している。運用成績が厚生年金の予定利回り(5.5%)を上回れば、その分を企業年金の利益にできるが、バブル崩壊後の景気悪化で予定利回りに届かず、その分が損失(代行割れ)になっている。
その代行割れが、全体の約4割を占める212基金にまで広がり、不足額は6289億円(11年3月末)にものぼっている。このまま運用利回りが低いままだと、行き着く先は基金の解散(代行返上)だ。
しかし、基金が解散すると、国の代行部分に相当する積立金を返還する必要が出てくる。じつはこの返還金が企業の経営を圧迫することとなる。総合型の年金基金の場合、このところ中小企業の業績が芳しくないだけにより深刻だ。
中小企業は損失分を穴埋めする余裕もなく、解散もできず、損失が膨らんで、にっちもさっちも行かない状況にある。
企業情報の帝国データバンクによると、「年金基金の解散が原因となった企業倒産は、兵庫県でタクシー業界の年金基金のケースがあり、13社が倒産しています」という。
兵庫県乗用自動車厚生年金基金が解散を決めたのも、運用利回りが予定どおりにいかなかったことが原因とされる。基金の不足額80億円を、母体企業で分担すると1社あたり約1億6000万円にのぼる。その分割負担に耐えられず、倒産したタクシー会社が相次いだわけだ。
帝国データバンクは、「AIJの件が引き金になることはあり得ますし、(年金基金が原因の倒産の)可能性はあります」と話している。