「段ボール家具」が注目されている。子どもの工作などではなく、実際に家庭の中で日常的に使うことができる本格的な家具だ。
10年ほど前からインターネットなどで販売され始め、じわじわ人気が出ている。さらに東日本大震災を機に、一段と関心が高まっているという。
「軽くて丈夫、処分しやすい」
段ボール家具を精力的に取り入れているのが、東京都港区の環境学習施設・区立エコプラザだ。正面入り口で来館者を迎えるカウンターテーブルは、スギ材の天板を、幾重にも貼り重ねられた段ボールが支える。他にも段ボールの椅子や棚などが館内のあちこちにある。
ノーベル平和賞受賞者で、資源を再利用して循環型社会をめざす「MOTTAINAI運動」の提唱者、ワンガリ・マータイさん(昨年9月死去)も訪れたことがある。
段ボール椅子をいたく気に入り、「ケニアの実家に持って帰りたい!」と熱烈にリクエスト。後日、エコプラザ特製段ボール椅子を送ったというエピソードもある。
なぜそんなに人気なのか。「安価なうえに、軽くて、丈夫。しかも処分しやすい」(販売関係者)。
段ボールといっても、輸送用ケースなどに使われる「強化段ボール」で作られているので、木材と同じぐらい頑丈。それでいて、木材製の家具のように釘や金具などを打ち付けていないので扱いやすい。あくまで段ボールなのでリサイクルも可能だ。「環境にやさしいという要素も人気に拍車をかけている」と関係者は強調する。
専門メーカーも続々参入
収納棚、ちゃぶ台、サイドボード、学習机、本棚……。ネット上では、販売各社が多種多様な段ボール家具を紹介している。簡単な棚やテーブルなら価格は数百~数千円程度と、木製家具から比べれば大幅に低価格だ。段ボール家具専門の販売業者だけでなく、段ボール箱メーカーも続々と参入している。
そんな段ボール家具に最初に注目したのは、学生や、転勤の多いサラリーマン。 そのほか、就学前の幼児用の机などとしても重宝されているという。また、高齢者施設に入居しようとする人が、自分が動けなくなった時のことを考え、「家具を処分してもらう時に迷惑を掛けたくない」と段ボール家具一式をそろえるケースもあるそうだ。
大震災をきっかけに注目度が増したことも見逃せない。避難所に支援物資として贈られた段ボール製のベッドは、冷たい床で寝起きしていた足腰の弱いお年寄りたちに喜ばれた。家財道具を失った被災者が、比較的容易に手に入れられる家具として重宝しているとも。木製のベッドは調達も運搬も容易ではないが、段ボール家具なら軽いうえ、いざという時は自分で製造することもできる。
既製品以外にも、強化段ボールの板(シート)を販売する業者もあり、DIYで手軽に楽しむこともできる。ネット上には切り方、ボンドでの貼り方などを指南するサイトもある。
不況が長引く中、ライフスタイル、ライフステージに応じて、段ボール家具を賢く使いこなすのもおしゃれかもしれない。もちろん、湿気や火気にはご注意を。