野村の日本人社員に溜飲を下げさせる
こうした中、持ち株会社のCEOは、強まる規制監督などの動きも含めた世界全体の状況を見ながらの舵取りに徹し、かたや「米びつ」(幹部)である国内事業は個人、法人の営業に精通した永井氏に委ねることにしたのであろう。
今回の野村の人事については、各方面から様々な解説が聞かれるが、「後継体制の構築開始」の一方、「渡部CEO体制の長期化」との見方も案外、多く聞かれる。
2008年4月に古賀信行野村HD社長(当時、現会長)の後任に渡部氏が昇格して丸4年。古賀氏の在任は5年間で、さらにその前任の氏家純一氏は6年間だった。渡部氏がそろそろ次期体制を考え始めても不思議ではない。しかし、永井次期野村証券社長が「帝王学」を学んで後継になる、とは必ずしも見られていないのだ。
つまり、1月に相次いで野村HDを退任した旧リーマンのジャスジット・バタール副社長(法人向けのホールセール部門CEO)とその腹心のタルン・ジョットワニ専務の人事と「セット」ではないか、との見方だ。赤字を垂れ流すうえに高給取りだったリーマンの親玉を退任させる一方で、野村を支える国内営業部門の成績優秀者である永井氏を、考えられる限りの上位ポストにつける。これによって野村の日本人社員に溜飲を下げさせ、渡部体制の求心力強化につなげる――。
実際、今や野村HDのトップとなるとバーゼルⅢなど規制への対応もあり、「国内営業一筋の人が適任か」という見方がないわけでもない。業界には「後任が見えない」との声もあり、渡部政権が長期化する可能性もある。