ダム再開には被害者の理解必要
須賀川市の橋本克也市長は2012年2月27日の記者会見で、藤沼ダムの決壊で被災した住民の生活再建や、藤沼ダムの早期復旧を目指すため、1億3500万円を補正予算として計上したことを発表した。市独自の被災者支援では、死亡・行方不明者の遺族に対して犠牲者1人につき1000万円の「弔慰金」を、また流出した家屋、大規模半壊、半壊、一部損壊家屋それぞれに見舞金を支払う。
今後のダムの復旧について須賀川市農政課に聞くと、「地元の農家にとって、農業用水を確保するために藤沼ダムは必要ですが、再開を決めるにあたっては被災した方々の心情に配慮し、理解を得なければなりません」と話す。今回、大きな被害に見舞われた須賀川市長沼の滝地区を記者が訪れると、当時大量の土砂が流れてきた簀ノ子(すのこ)川では今も重機による復旧工事が行われており、その付近は家屋が流された後の更地が広がっていて、いかに大規模な事故だったかを想像させる。一方でダムは、かんがい用として下流域837ヘクタールを潤す役目をにない、水の恵みを与えていたのも事実だ。
震災から1年、藤沼ダムでは危険回避のための立ち入り制限は出されているが、現時点で復旧工事が行われている様子はない。行政でもダム以外に震災の復興支援で予算を組む必要があり、今後は原発事故による広範囲の除染も進めていかねばならず、課題は多いようだ。