米ニューヨーク・タイムズ紙に掲載された広告をめぐり、波紋が広がっている。一見、韓国に観光客を呼び込むことが目的のように見える文面なのだが、その中には「独島」や「東海」といった、韓国側が竹島や日本海の名称としている単語が紛れ込んでいるのだ。広告主が過去に出した広告では、「独島は韓国の領土」といったストレートな主張が展開されていたが、今回は「変化球」を投げてきたようだ。
国旗と地名を線で結ぶ
問題になっているのは、NYT紙が2012年3月1日付の紙面で掲載した広告。見出しに大きく「CONNECT」(つなごう)とあり、左半分に国旗が4つ、右半分に地名が4つ並んでいる。地名がどの国に属するか、線で結んで答えるという趣向のようだ。掲載されている国旗は、上から米国、イタリア、韓国、インドネシア。一方の地名は、上から独島、ハワイ、バリ、シチリアという順に並んでいる。4組のうち、韓国の国旗と「独島」だけが線で結ばれていない。読者に「韓国=独島」という印象を与える狙いがあるようだ。
旗と地名の下には、
「独島は、素晴らしい景色がある東海にある、美しい島です」
と、観光地紹介にも見える文章があるが、何の説明もなく「独島」「東海」という言葉が使われており、韓国側の地名を読者にすり込む狙いがありそうだ。
広告主は明示されておらず、「www.ForTheNextGeneration.com」(次の世代のために)というURLが記載されているだけだ。ドメイン(ネット上の住所)の登録情報やウェブサイトによると、ウェブサイトは韓国の接続業者を使って構築され、ソウルとニューヨークに拠点を置いているようだ。
「独島は韓国に属している。日本政府はこの事実に向き合わなければならない」
ウェブサイトで取り上げられているテーマは、
「独島と東海」
「従軍慰安婦」
と、日本と見解が対立しているものばかりだ。また、中国と韓国とが事実関係を争っている「高句麗と渤海」というテーマもある。ウェブサイトには、過去にこの団体が出した新聞広告も掲載されている。それによると、
「独島は韓国に属している。日本政府はこの事実に向き合わなければならない」(05年7月27日、ニューヨーク・タイムズ紙)
「日本政府は日本軍による従軍慰安婦の強制連行を歴史的事実と認め、世界と人類に最も誠実な謝罪をしなければならない」(07年4月17日、ワシントン・ポスト紙)
と、かなり強い文言の広告を出していたようだ。
それに比べると、今回の広告は比較的ソフト路線だが、ニューヨークの日本総領事館は、NYT紙に対して
「読者を誤解させる恐れが高い意見広告だ」
と抗議。NYT紙は
「今後は、この種の誤解を招きかねない広告は掲載しない」
などと返答したという。