巨人の「契約金超過」報道 担当は朝日新聞エース「新聞協会賞」記者

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   プロ野球・読売巨人の主力選手が、入団時に球界の申し合わせで決まっていた「最高標準額」を超える契約金を貰っていたと朝日新聞が報じた。巨人側も即日抗議し、朝日VS読売・巨人の全面戦争に発展する勢いだが、この問題を取材した朝日記者の「敏腕ぶり」に注目が集まっている。

   これまでの経緯をまとめると、2012年3月15日付けの朝日新聞朝刊紙面一面に「巨人、6選手に契約金36億円」という見出しが躍った。

大阪地検特捜部FD証拠改ざんをスクープ

   プロ野球では1993年に逆指名制度が導入されてから、契約金が高騰するのを避ける目的で、新人の契約金の「最高標準額」を1億円と申し合わせた。記事によると、巨人は、高橋由伸選手(97年6億5千万円)、上原浩治選手(98年5億円)ら6選手と計36億円、超過額27億円にもなる契約を結んでいたという。

   巨人の複数の内部資料や関係者証言によって明らかになったといい、一度に6人分をまとめて掲載したことからも担当記者による念入りな取材活動があったことが予想される。

   記事に署名はないものの、巨人の抗議文の中で3月14日、桃井恒和球団社長が球団事務所で(朝日の)記者2人に資料を使って説明した、ということが記者の実名入りで明らかにされている。一部のメディアがそのまま実名で報道したので、記者名がわかった。

   この記者は、2010年に厚労省郵便不正事件での大阪地検特捜部検事によるFD証拠改ざんをスクープ。朝日新聞はこの報道で同年の新聞協会賞を受賞した。

   検察の不正を暴くというのは、マスコミでもきわめて難しい取材とされ、特に大阪地検の事件は「冤罪」もからみ、その後の影響も大きかった。

栃木の地方紙、下野新聞から朝日へ「転入」

   記者は栃木県足利市出身で99年に地元・下野新聞に入社した。2001年、栃木県鹿沼市職員がゴミ処理業者らに殺害された鹿沼事件の大型連載で、情報収集の核となり、共著「狙われた自治体-ごみ行政の闇に消えた命」が2004年度石橋湛山記念・早稲田ジャーナリズム大賞奨励賞を受賞した。

   その後、宇都宮で起きた知的障害者男性の誤認逮捕・起訴問題を追跡取材し、06年度新聞労連ジャーナリスト大賞の「優秀賞」を受賞している。07年に「フィールドを広げたい」と全国紙の朝日新聞に移った。

   マスコミ業界では、「大阪地検」の事件以前から、一部ではその名を知られた記者だった。大阪地検のスクープが報じられた際には、毎日新聞の牧太郎専門編集委員がブログに「あの記者(実名)ではあるまいか?『夜討ち朝駆けで捜査員にべったり張り付いて得る情報ではなく、権力と対峙して報道していくこと』を力説していた、あの記者ではないだろうか?」と、前々から注目していたことを記していた。

   この記者が今回の巨人契約金報道に投入されていることはネットでも話題になり、「大阪地検追い込んだやつと同じ記者だったのか。超敏腕記者やん」「この件も相当調べてるかもな」「朝日の大エース投入w」といった書き込みが寄せられている。

   マスコミ関係者によると、どこかの社が大きなスクープを取ったり、キャンペーンを始めたときは「誰が担当なのか」というのが、業界内では大きな関心事になる。「すご腕」記者がやっているということがわかると、各社とも追いかけざるを得なくなるという。

   今回は、巨人軍が抗議文の中で実名を明かしたことから、「新聞協会賞」記者が朝日の中心メンバーとわかったわけで、今後の展開がいちだんと注目されることになりそうだ。

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