母親(39)の交際男性からわいせつ行為を受けた二女(当時10歳)について、富山地裁が幼すぎるとして告訴能力がないと判断する判決を下したと報じられた。これに対し、ネット上で判断を疑問視する声が相次いでいる。
「地獄だった。重い罰を与えて」
二女は、被害を受けて、こう訴えたという。毎日新聞が2012年3月14日に報じた供述調書内の言葉だ。
富山地裁、「幼すぎる」と起訴無効に
毎日や朝日が報じたところでは、富山市内の無職男性(42)が、長女(当時15歳)や二女にホテルでわいせつな行為をしたとして、富山地裁は1月19日、強制わいせつ罪などで懲役13年の実刑判決を言い渡した。そして、なんと母親も宿泊予約などの手助けをしたとして、ほう助罪などで懲役4年の判決が下されている。
二女への強制わいせつ事件2件について富山地検は、二女の供述調書を告訴とみなし、祖母からの告訴状も受けて起訴していた。ところが地裁は、この2件については、二女が幼すぎて告訴能力がないと判断した。
このうち1件については、母親が起訴されていないことから、告訴権者は母親だとして、男性の起訴を無効とする公訴棄却判決を下した。これについて、富山地検は判決を不服として、すでに控訴している。
残る1件については、母親も起訴されているとして、祖母の告訴状を有効と判断していた。
二女の告訴能力を否定した地裁判断について、ネット上では、疑問の声が相次いでいる。「なにこれ泣き寝入り?」「お役所仕事すぎるわ」「社会への影響を考えろ」といったものだ。
「告訴能力を認めてもよかった」
10歳の子どもの告訴能力について、板倉宏日大名誉教授(刑法)は、こう意見を述べる
「確かに、刑事訴訟法には、告訴できる年齢についての規定はありません。しかし、10歳にもなったのなら、告訴能力を認めてもよかったと思います。この二女の場合には、『重い罰を与えて』などと、しっかりと話をしていると言いますし」
さらに、富山地裁が祖母の告訴状を認めなかったケースには、こう言う。
「ちょっと形式的に過ぎますね。確かに、祖母は親権者ではありませんが、ほう助罪に問われた母親は、告訴権者になりようもないと感じます。ですから、祖母の告訴も認めるべきだったでしょう」
一方、別の司法関係者は、10歳ならやはり親権者などが告訴すべきだとする。
「親がダメなら次の順位と、ほかに告訴できる人はいると思います。10歳で危ない橋を渡ることはないでしょう。最高裁では1958年に、13歳ぐらいになる中学2年生について強姦罪での告訴能力は認めています」
富山地検については、告訴をするやり方について、「二女に聞いてちゃんとした告訴状を作るか、『告訴してほしい』という二女の言葉を供述調書に書けば、裁判官の心証も違ったかもしれません」と言っている。