【置き去りにされた被災地を歩く】第3回・栃木県那須町
風評払拭めざし「正しい情報発信」  農家と連携、食と観光の「安全」もPR

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「風評被害のせい」と嘆くだけでいいのか

高原の自然に加えて、温泉も楽しめる那須
高原の自然に加えて、温泉も楽しめる那須

   那須町はウェブサイト上で、地表から50センチの高さで測定した放射線量を公表している。町内30か所の2012年3月8日時点の数値を見ると、もっとも高い場所で1時間当たり0.69マイクロシーベルト、もっとも低いのは同0.10マイクロシーベルトで、場所によって開きがある。例えば都心の渋谷区や新宿区では地表1メートルの高さでの直近の測定値が、いずれも0.1マイクロシーベルト以下となっている。高さ5センチの場所でも数値はほとんど変わらない。都心と比較すると確かに、那須町の方がやや高線量だ。

   当初に比べ、線量の値が下がっているとはいえ、「すぐに訪問客を呼び戻せる妙案は、正直思い浮かばない」と茅野さんはため息をつく。安全性をアピールしようと、除染作業に精を出すグループもいる。

   ただ冷静に考えてみると、「これを単に『風評被害のせい』と嘆くだけでいいのか」との疑問も頭をもたげてきた。那須の豊かな観光資源のおかげで、シーズンになれば黙っていても客は集まった。それだけに、これまで集客のための努力を怠っていなかっただろうか――。危機的な状況に陥っている今だからこそ、「那須の観光地としてのあり方が試されているのではないかと思うのです」と茅野さんは話す。

   まず、地元の同業者間の連携強化に動き出した。那須町にはペンションが約150軒あるが、これまでは複数のグループに分かれて活動していたという。新たに那須観光協会が「受け皿」のような形となり、すべての事業者の力を結集した「那須復活」のムーブメントづくりに動き出した。

   とはいえ、放射能対策の考え方は同業者の間でもさまざまで、全体の方針を決めるのも簡単なことではない。それでも「まずあらゆる意見を聞き取り、議論し合っていくことが解決への第一歩だと信じています」と茅野さんは強調する。「今こそ5年、10年先を見据えた態勢づくりをしなければなりません」。

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