「6月以降を見てみないことには…」
たしかに、日銀の追加の金融緩和策はそれまでの75円台という「超円高」の流れを止めたのは確かだ。
貿易収支の先行きについても、家電製品などの輸出品の競争力が韓国、中国などに押されて相対的に低下していることや、主な輸入品であるエネルギー資源や穀物の価格がこのまま高止まりすると、大幅な黒字基調に復帰することが容易ではないことは想像がつく。それは長期的には、円高傾向に歯止めをかけることになる。
となると、やはり「円安トレンド」に潮目が変わったのではないか――。
ところが、「まだそうとは言いきれない」と、前出のみずほコーポレート銀行の唐鎌氏はいう。そして、こう説明する。
「おそらく12年の貿易収支は昨年よりだいぶ改善できるとみています。そもそも、1か月に10%近くの(ドルの)上昇が長続きするはずがありません。いまの円安が行き過ぎとみるべきです。米国景気も例年3、4月は好調です。6月以降を見てみないことには回復基調に乗ったとは言い切れません」
「1ドル90円」という声を聞かないわけではないが、唐鎌氏は「貿易収支の回復しだいですが、円が下がっても1ドル85円台でしょう」とみている。