野田佳彦首相と温家宝首相の会談で、日本が中国国債の購入を決めてから約3か月が経った2012年3月12日、中国当局が650億元(約103億ドル相当)、日本円で約8450億円の購入枠を許可した。
一方、中国も日本国債を大量に購入している。財務省によると、2011年4月には期間1年を超す中長期債で中国の買越額が1兆3300億円と過去最高に膨らんだ。ただ、11年夏以降は売り越しが目立っている。とはいえ、日中のこの「持ち合い」関係は、なにをもたらすのだろうか。
中国マネーが日本国債の「消化」助ける
中国では諸外国が中国国債を買う場合、中国人民銀行(中央銀行)の認可を得る必要がある。その認可が下りた。購入枠は650億元、日本円で約8450億円だが、経済アナリストの小田切尚登氏は、「それほど大きな規模ではない」と指摘。ただ、「外交的なポーズともいえるが、最初の一歩としてはまずまず」と評価する。
中国はここ数年、日本国債を買い増してきた。背景にあるのは、欧州の債務問題などで揺れるユーロや、景気低迷が続く米ドルの信用不安がある。その中にあって、日本国債は比較的安全な資産とされてきたのだ。
中国人民銀行の易綱副総裁は、「日本国債への投資は、日中両国が共に利益を得られる状況下で実施したい」と強調した。
日本は中国からの投資が多すぎると、円相場の上昇につながることを懸念している。実際に2011年春から夏にかけて円が上昇したとき、外国為替市場では「中国による日本国債の買い増しが円高につながっている」とみていた。
易副総裁は、「今後の(日本国債への)投資にあたっては日本側の事情にも配慮する」と、柔軟姿勢も示した。
日本にとって、中国に日本国債を保有してもらうと、大いに助かる。「なにしろ、世界一のお金持ちですからね。いまや日本国債の消化は個人でもまかないきれなくなりつつあります。日本人だけでおカネを回すことはもう限界で、海外投資家への依存を高める必要がありますし、その相手として(中国)は当然の成り行きともいえます」(小田切氏)。 東日本大震災への復興資金なども必要で、まだまだ日本はカネがいる。国債の発行は続くだろうし、その引き受け手として中国は欠かせないらしい。
世界が「中国マネー」を頼りにしている
日本にとってのメリットはまだある。人民元が安いうちに中国に投資しておくことで、将来の利益が期待できるからだ。欧米の先進諸国が財政不安や景気低迷であえぐなか、中国はなおも経済成長が見込める。「投資先としても悪くはないと思う」と、前出の小田切尚登氏はいう。
一方、中国のメリットは分散投資にある。中国の外貨準備保有高は2011年12末時点で世界最大の約3兆2000億ドルにのぼる。現在はその7割を米国債などのドル資産、2割をユーロ資産で運用しているとされる。それを多様化したいが、増えたとはいえ日本国債など、まだほんのわずかでしかない。
ドルやユーロの先行きに不透明感が漂うなか、運用先の多様化は中国にとって大きな課題とされる。中国は日本国債への投資に積極的だが、12年2月には10億ユーロのスペイン国債を購入している。
先進国はどこも「赤字体質」だ。日本だけでなく、いま世界中が中国マネーを頼りにしていることは事実のようだ。