「目的型のコミュニティー」として機能
プロジェクトで特徴的なのが、行政との協業だ。川田さんは当初から市役所に赴き、「行政の協力がなければ正しい対策をとれない」と訴えてきた。スタート直後は市側と衝突することもあったが、現在は除染に必要な軍手やマスクといった用具を提供してくれる。一方、プロジェクトで培ったノウハウは行政と共有、蓄積して今後に生かしていくという。
市でも市民が除染作業を行う際の「アドバイザー」育成に乗り出した。養成支援は、プロジェクトの除染チームの専門家があたっている。
「つながろう柏」には他地域の団体から、プロジェクトの運営に関する問い合わせが寄せられ、会自体も拡大を続けている。都市部では隣近所の交流が希薄になって、「コミュニティーの崩壊」が問題になっているが、柏では「放射能に立ち向かう」「子どもを救う」という共通のゴールを定めた「目的型のコミュニティー」としてプロジェクトが機能し、そこから町会や地域内で同じ不安を抱える人たちのネットワーク構築につながっているのではないかと川田さんは考える。
現時点では「年間被ばく線量1ミリシーベルト以下」を達成するうえで障害は多い。放射能から逃れようと、柏を離れ、転居をする住民もいる。
柏市の人口統計をみると、2012年1月以降およそ100世帯ずつ減っており、ベッドタウンにもかかわらず、流出が続いているのも事実だ。いつになれば「見えない敵との戦い」に終わりがくるか、予想もできない。
川田さんは「ずっとやり続けなければならないと思うと長続きしない」と考える。今のうちに、市民目線による正しい情報を広げて、多くの人を「自分も加わろう」と誘うようにすれば、おのずと会の活動も活発になり、その結果、除染も進んで「安心して住める街」になっていくのではないかとみている。