津波の対処法を若い世代に理解してほしい
現在、月4回程度「語り継ぐ会」の活動をしている仲條さんは、県内の小学校の防災授業で話した経験が印象に残っているという。津波が起きたら、各人がばらばらに高台へ避難する必要性を訴えたときだ。
生徒から「家族が取り残されていたら、見捨てなければならないのですか」との質問が飛んだ。仲條さんは「とてもつらいのは分かります。でも災害に情は通じません。まず自分の安全を確保して冷静になり、逃げてくる人には高台から大声で安全な避難場所を指示してあげてください」と諭した。
後日、生徒から手紙が届いた。帰宅後に仲條さんの話を両親に伝えたところ「その通りだ」と言われ、納得したという。「また津波が発生したらどうすればよいか、若い世代が理解してくれるとうれしい」。
もうひとつ仲條さんが懸念するのが、災害直後の被災者の受け入れ態勢だ。 仲條さん一家も津波からは逃れたが家を失い、騒然とする中で病気の母親をどこに連れて行けばよいのか、何の情報もなく、一時は途方に暮れた。仮に避難所に入れたとしても、サポートが不備ではお年寄りにとって厳しい生活となる。「例えば『この避難所にはこういう病気の専門医がいる』という仕組みがあらかじめ決まっていれば心強いのでは』と仲條さんは言う。
非常時に何もかも行政任せにしても、細かな対応は期待できない。そこであらかじめ自治会ごとに災害が発生した際の「動き方」を決めておき、行政と連携しておくことを仲條さんは提案する。自治会単位なら近所の人たちの家族構成や健康状態といった事情を把握している可能性が高く、災害時に的確な支援ができるからだ。
仮設での生活も課題があるという。中でもひとり暮らしのお年寄りは孤立しがちで、先の見えない日々に気力が低下する恐れがある。「だからこそ周りが声をかけると同時に、行政も全体の支援がいったん落ち着いたら、次の段階として個別に困っている人へきめ細かく配慮してもらえれば」と仲條さんは願う。