橋下徹大阪市長が府知事になる前の「弁護士時代」に出した「交渉術」の古本が、ネット販売サイトで高値をつけている。定価1000円だった本が2万4570円をつけている例もある。
マスコミや市職員の労働組合などを相手に派手な「交渉」を繰り広げる橋下市長の姿は、連日のように報じられている。国政進出を掲げ、永田町とも交渉を続けており、その交渉術の秘密に迫りたいと考える人は少なくないようだ。
2万円や1万8000円の例も
最安値が1万4965円だった。2012年3月9日夕現在、ネット通販大手のアマゾンをみると、「図説 心理戦で絶対負けない交渉術」(日本文芸社、2005年)が11品並び、最高値は2万4570円をつけていた。ほかに、2万円や1万8000円の品もある。
橋下市長が2008年に府知事に初当選する前、弁護士としてTVバラエティ番組などで活躍していた頃に出した本だ。
「図説」の元本になった「最後に思わずYESと言わせる最強の交渉術」(同、2003年)も、定価1260円だったものが、最高で9800円をつけ、8000円台も並んでいる。19出品中、最安値は2898円だ。
ネットの楽天ブックスで調べると、2冊とも品切れだった。いくつかの古書検索サイトをみても見つからない。全国的に展開するジュンク堂や紀伊国屋書店にも聞いてみたが、注文も取り寄せもできないとの答えだった。
1万円台半ばで「図説」を出品しているある古書店にきくと、同店では「値段は機械的に決まっている」。(1)出版社で品切れなのか、や(2)本自体の人気度合い、(3)他社の値段設定などを総合的に判断するシステムがあるそうだ。本の人気度合いをどう判断するのかは、「細かいことは言えません」。
同店を含め、「図説」が高値をつけていることについては、「感覚的には、少し高くなりすぎていますね」と話した。いつごろから高値状態になったのかは分からない。
高値の理由としては、はやり最近の橋下市長の露出の多さが挙げられる。ただ、1000円程度の本が一時的に数万円になる事例は、著名人絡みのニュースの影響などで「ままあること」という。
市長当選後、品切れに
一方、都内の老舗古書店にきくと、「橋下本」を特別意識することはなく、今回の高値は「ネット特有の現象だろう」と分析した。マスコミ露出の多さから一時的に高値をつけ、数か月もすれば極端に安くなる例もある。「うちの店が仮にその本を入手しても、つける値段は200円かそこらでしょう」とも話した。
橋下本2冊の出版社である日本文芸社にきいてみた。
アマゾンでついている値段を告げると、ある担当者は「びっくりしました。取っておけば良かったですね」とおどけた。
最高9800円の「最後に思わず~」が品切れになったのは、2011年11月末にダブル選を制して橋下氏が大阪市長選に当選してほどなくだという。「府知事の頃にはまだ本はありました」。
橋下氏が市長当選後ほどなく、大阪維新の会の国政進出に向けた動きをみせたことから、関心も完全に全国区に広がったことが関係しているのかもしれない。
出版当時から「結構売れた」。重刷を重ね「5万部程度かな」。一方、「図説」の方は、重刷もなく発売後数か月で品切れになった記憶があるそうだ。やはり、高値の「図説」の方が品薄だ。2冊とも、今のところ重版予定はない。
橋下市長が率いる維新の会の国政進出について、毎日新聞が3月上旬に報じた世論調査で「期待する」が61%にも達した。橋下市長は結果について、「完全なバブルですよ。うれしい反面、怖い」と述べた。「橋下・交渉術本」の古書高値は「バブル」なのか、それともしばらく続く現象なのだろうか。