ソニー再生はトップの決断次第 エレキ中心に戻る手もある
ノンフィクション作家・立石泰則氏に聞く

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コンテンツがあるがゆえに足かせとなった

――出井氏は目指したものは何だったのですか。

立石 「ハードを売った後から始まるビジネス」を掲げましたが、「なかなかうまくいかない」とこぼしていました。新しいビジネスに挑戦するなら、たとえハードの売り上げが好調でも「ハードの利益はもういい」と割り切るぐらいでないと成功しません。
   創業者グループの一員ではない出井氏は、数字で結果を出すことで社内の求心力を高めようとしました。そのため「3年後は利益を生む技術」であっても、目の前の利益を出すのに必死で、その3年間が我慢できない。長期的な視点での開発を怠り、結果「2番手商法」に甘んじてしまうことになるわけです。テレビも、ブラウン管から薄型へというのは時代の流れだったわけですが、テレビで利益を出している時にこそ新しいテレビに投資すべきなのに「もうかっているから、まだいいじゃないか」と考え、タイミングを逸してしまった。

――テレビ以外にも、例えばかつて大ヒットした「ウォークマン」が、今や米アップルの「iPod」の後塵を拝しています。

立石 ソニーはアップルよりも早く、メモリー内蔵型の携帯オーディオの商品化に成功しています。それが、「ネットワークウォークマン」ですが、グループ内にソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)という世界的な音楽会社を抱えているため、違法コピーされないように厳しい著作権保護技術を使用するなどユーザー以上に気を使った。そのことは、ユーザーからすれば、楽曲をダウンロードする際もした後も、非常に使いにくいものにした。当然、広がるはずもありません。
   一方「iPod」を開発したアップルは、自前でコンテンツを持っていません。だから多くの音楽会社に積極的にはたらきかけて、著作権保護もソニーのような厳しいものを採用しないことに成功しました。つまり、使い勝手がよくなったわけです。ソニーはコンテンツがあったからSMEへの「配慮」ばかりを優先して逆に手足を縛られ、ユーザーを置き去りにしたのです。
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