ソニー再生はトップの決断次第 エレキ中心に戻る手もある
ノンフィクション作家・立石泰則氏に聞く

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   テレビ事業を中心に経営不振が続くソニー。2012年4月1日には、現副社長の平井一夫氏が社長兼最高経営責任者(CEO)に就任し、新体制が船出する。

   大賀典雄氏、出井伸之氏、安藤国威氏、ハワード・ストリンガー氏と4代続けてソニーのトップを取材し、「さよなら!僕らのソニー」を上梓したジャーナリストの立石泰則氏は、「技術のソニー」が危機的状況にあると断じる一方で、復活のための処方箋は残されていると見る。

「変調」は大賀体制末期に始まっていた

長年ソニーを取材してきた立石泰則氏
長年ソニーを取材してきた立石泰則氏

――ストリンガー氏が会長兼CEOを退任し、代わって平井氏の新CEO就任が決まりました。今回のトップ交代をどうご覧になりましたか。

立石 ストリンガー氏は事実上の解任でしょう。もともと本人は、今年は会長定年となる70歳を迎えますので、そこでの退任を口にしていました。ところが年明けの1月7日、日本経済新聞朝刊で「ストリンガー氏CEO続投」が報じられ、私も新聞を見て驚いたほどです。しかし、テレビ事業は8年連続で営業赤字、最終損益も4年連続赤字で続投となれば、「その前にCEOとしての責任をとるべきではないか」という異論が出て来ざる得ない。特に続投に批判的だった一部の社外取締役は危機感を募らせ、最終的に取締役会での彼らの経営責任追及からストリンガー氏が退くことになったのです。
   振り返れば、ストリンガー氏をCEOにしたこと自体、無理がありました。前任の出井会長と安藤社長が同時に辞任したのは、エレクトロニクス(エレキ)事業不振の責任をとったものでした。当然ストリンガー氏はエレキ事業の再建が至上命題だったはず。ところが、日本に居を構えず米国から定期的に日本に通ってくるようなやり方では、再建など出来るはずがありません。しかもストリンガー氏は、コンテンツ事業には詳しくてもエレキ事業の経験も関心もない人です。社長に就任した中鉢良治氏も記憶メディア畑でキャリアを積んだとはいえ、テレビ事業をはじめエレキの本流ではありません。つまり、最初から無理な人選だったのです。

――かつてモノづくりの会社だったソニーが変わってしまった。変調はいつから始まったのでしょう。

立石 「大賀体制」の末期には、既に病根が出来始めていました。創業者の盛田昭夫氏が病から会長を退いて、大賀氏がひとりでソニーのかじ取りを始めることになると、少しずつ経営判断にミスを生じるようになります。アナログからデジタルへ、ネットワーク時代へ移る中でモノづくりに生じた変化を理解しきれなかったのが原因です。他方、社内では「派閥」が生まれ、昔からソニーを支えた個性的な技術者たちの居場所も失われていきました。
   大賀氏の後継者となった出井氏について言うと、社長時代の最初の5年間の功績は素晴らしいと思います。「デジタル時代に対応する企業として出直そう」と明確なビジョンを打ち出したことで、社員に安心感を与えました。2兆円の負債を減らしながら新製品の開発に取り組み、ヒット商品を生み出します。とくに大ヒット商品となったブラウン管式平面テレビ「WEGA(ベガ)」は、ソニー独自のデジタル高画質技術「DRC」の搭載が大きく貢献しましたが、その開発者である近藤哲二郎氏を見いだしたのも出井氏です。
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