スバルブランドの富士重工業が自社開発の最後の軽自動車となる商用車「スバルサンバー」の生産を2012年2月末で終了したことは、トヨタ自動車と資本提携関係にある富士重工が、トヨタグループ内で「スポーツタイプカーメーカー」として生き残りをかけることを意味している。
トヨタグループ内で子会社のダイハツ工業が軽の開発・生産を今後も担うことは明確だが、軽の開発・生産から撤退した富士重工が、トヨタとの提携でスポーティーなクルマを得意とするメーカーとして存在感を高められるか。真価が問われるのはこれからだ。
NHKは破格ともいえる扱いで「軽生産に幕」と報道
サンバーの生産を終了した群馬県太田市の富士重工群馬製作所本工場は、3月からトヨタと富士重工が共同開発したスポーツカー「トヨタ86」と「スバルBRZ」の生産が始まった。2012年度中には、販売好調なスバルインプレッサの生産も開始するという。
群馬製作所の本工場は、富士重工の前身である旧中島飛行機の本拠地があった場所で、1958年発売のスバル360以来、富士重工が一貫して軽の生産を続けてきた主力工場だ。その本工場で軽の生産を終了し、トヨタと共同開発したスポーツカーの生産を始めることは、時代の変化、富士重工の経営戦略の変化を象徴しており、富士重工関係者はもちろん、「スバリスト」と呼ばれる熱心なスバルファンにとって感慨深いものになった。
サンバーの生産終了に合わせ、富士重工の現役社員、OBらが出席して開かれた式典で、吉永泰之社長は「多くのお客様から惜しまれながら生産終了を迎える製品を持てたことは、メーカーとして大変幸せなことだ。改めてお客様をはじめ、関係者の皆様に感謝を申し上げる」と述べた。
サンバーの生産終了、すなわち富士重工がスバル360以来、54年に及ぶ軽自動車の歴史に終止符を打つことは、マスコミでも大きく取り上げられた。NHKは「スバル、軽生産の歴史に幕」と題し、破格ともいえる扱いでスバルの軽の歴史、トヨタとの提携関係の意義などを伝えた。朝日新聞は3月3日付朝刊の「天声人語」で「誇れる軽の歴史にひと区切りをつけ、富士重は個性的な普通車に力を入れるという」などと、富士重工にエールを送った。