半導体大手のエルピーダメモリが2012年2月27日、会社更生法の適用を申請し、経営破綻した。「日の丸半導体」として政府が支援したが、市況悪化時にも最先端設備に大規模な投資を続ける韓国勢にシェアを奪われ、巻き返せなかったことが大きい。それはさておき、エルピーダは社債発行による資金調達の規模が比較的大きく、破綻によって計1385億円の社債が債務不履行(デフォルト)に陥った。これは2001年に破綻したマイカルの3453億円に次ぐ、過去2番目の大きさで、社債市場に動揺が走った。
エルピーダの社債は、普通社債が450億円、新株予約権付き社債(転換社債)がドル建てを含めて935億円に上り、計1385億円だ。このうち、転換社債は購入単位が100万円と比較的個人投資家も手を出しやすいもので、個人投資家も多く保有していたと見られる。
過去の例では回収率は10%程度
マイカル破綻時に、一口100万円単位の普通社債を主婦なども含めた個人投資 家が多数購入し、皆大損したことが思い出される。エルピーダの会社更生法を申請した翌日には、個人投資家らによってエルピーダの社債は投げ売り状態だったという。また、エルピーダの破綻以降、投資家のリスク回避姿勢が強まり、信用度の低い他の銘柄でも売りが優勢になった。
何より衝撃だったのは、パソコンや携帯電話、ゲームなどの電子機器に使われる「DRAM(ディーラム)」と呼ばれる記憶装置の専業メーカーとして、国策として国も支援してきたはずのエルピーダが、政府からハシゴを外されるような形で経営破綻に追い込まれたことだ。破綻直前でも格付けは「BBB-(トリプルBマイナス)」(日本格付研究所)で、「債務履行の確実性は認められる」水準だったことからもアナリストの中には「政府によるバックアップの期待を無視できない銘柄だった」との指摘がある。「今後は政府による信用補完効果を疑う必要が生じる」との声も出ている。
社債市場で今後の焦点は「いくら戻ってくるのか」の弁済率(投資家から見れば回収率)に移る。関係者によって見方は分かれるが、過去の例では10%程度のことが多い。
今後のカギはスポンサーの選定
悲観的な見方としては「これまで生きながらえたのは政府の盤石な支援が期待されたためで、資金繰りに余裕はない。更正法申請なら回収率はゼロに近いのではないか」(外資系証券アナリスト)との声もある。このアナリストは「再建を諦めて清算された場合、2~3割程度の回収が見込める」とまで言っている。
一方、今後のカギはスポンサーの選定、との見方も多い。エルピーダの資金繰りは苦しいが11年末の自己資本比率は28%超。資産超過でもあり、相当程度の手元資金を残したまま東京地裁に資産の保全命令を受けている。また、債権者への弁済額確保を目指す方針とも伝えられている。このため、「エルピーダの企業価値の毀損を最小化できるよう、事業の継続と財務を支えるスポンサーが適切に選定されれば、相当規模の回収率も期待される」(銀行系証券)といい、いったん中断した米マイクロン・テクノロジーとの提携交渉に注目が集まっている。
ただ、エルピーダは現経営陣が続投するという更正法としては異例の展開。これに対し金融界には反発もあり、スポンサー選びを含めた再建を 軌道に乗せることを困難視する見方も強い。