医師の処罰・処分には反対・慎重論も
以前は、刑事事件で罰金刑以上が確定した医療事故などが処分対象だったが、厚労省は2002年、刑事罰には問われない医療ミスでも明らかな過失があれば処分する方針に転じ、対象を広げた。
刑事裁判によらずにミスの事実認定をしなければならず、刑事事件以外の医療ミス処分は「3件だけ」(朝日新聞、3月5日配信記事)と少なかった。医療事故に関わる弁護士の中には、厚労省による認定作業の「事務的な足腰の弱さ」を問題視する声もある。
今回の塩井医師のように複数の被害者らが同じ医師の処分を厚労省に求めている事例は他にもあるのだろうか。
厚労省は「そうした数字があるかどうかを含め、答えられない」としている。
処分問題は別として、「リピーター医師」の存在は以前から指摘されていた。2003年7月23日付朝刊の読売新聞の社説は「医療事故 ミスを繰り返す医師には厳罰を」(見出し)と訴えた。
2005年には日本医師会が、「過去3年で3回以上の有責事故」を起こした「リピーター医師」を対象に医療防止事故研修会を行い、当時の報道によると対象者は約120人だった。しかし、研修会実施後の出席率は公表されず、翌年からは、対象を「リピーター医師」には限定しない形に変わった。医師会によると、現在も「リピーター医師に限定」しない形で続いている。
一方、医療界や法曹界の一部には、医療事故の再発防止の原因追及のためには、医師の刑事処罰は行うべできではなく、行政処分も慎重であるべきだとの意見もある。