ヤフーは2012年3月1日、井上雅博社長(55)が12年6月で退任し、後任に宮坂学・執行役員コンシューマ事業統括本部長(44)が昇格する人事を発表した。ヤフーでは人事の理由として「若返り」を強調するが、1996年の創業から16年間にわたって社長を務め、創業以来の増収増益を支えてきた井上氏の退任には「唐突感」を指摘する声もある。その背景には、同じグループ内のソフトバンクの社長も務める、孫正義会長との「微妙な距離感」があるとの見方もある。
井上氏は4月1日に最高経営責任者(CEO)を、6月1日に社長を宮坂氏に引き継ぎ、取締役からも退く意向だ。
経営陣の平均年齢53歳から41歳に若返る
井上氏は3月1日に開いた記者会見の中で、
「僕がこのままやっていくと、守りの方が重めになっていく」
と、世代交代で「攻めの姿勢」を強化する必要を説いた。その上で、携帯電話がカバンの中に入れっぱなしで「発信専用」になっていることや、
「ソーシャルサービスは、どうも苦手」
と、最先端のサービスを活用しきれていないことも明かした。
孫正義会長も、現経営陣について
「98点ぐらいのレベル」
と高く評価しながらも、現経営陣の平均年齢が53歳なのに対して、新経営陣は41歳。
「平均年齢そのものが若返る」
と、「若返り」の重要性を説いた。
だが、井上氏の退任の背景には、「若返り」以外の要因もあるのではないかとの指摘も出ている。そのひとつが、01年に始まったブロードバンドサービス「ヤフーBB」だ。井上社長自身は、記者会見でヤフーBBについて「日本のブロードバンドの普及を猛烈に加速させた」と振り返っている。ただし、ITジャーナリストの井上トシユキさんによると、創業以来「ソフトバンクはインフラ、コンテンツはヤフー」という不文律があり、「ヤフー」の名前を冠してインフラに乗り出したことに井上社長が反発したのだという。
当時から、ヤフー社内では、
「井上社長は緻密で論理的なのに対して、孫会長は情熱的で、思いつきでものを言うところがある」
と、両者の「微妙な距離感」を指摘する声が出ていたという。この「距離感」が、10年以上尾を引いた可能性もある。