未曾有の東日本大震災の発生から間もなく1年。テレビ局は震災関連の特集番組を用意しているところだが、そうした中で日本医師会が津波の映像を可能な限り自粛するよう、NHKや日本民間放送連盟(民放連)などに要請した。
甚大な被害をもたらした巨大津波の映像は、ショックやトラウマ(心的外傷)を抱える被災者らに不安や苦痛を与える、と考えている。
NHK「津波を特集する内容ではない」
日本医師会の要請は、震災関連の番組を放送する際に、津波の映像を可能な限り自粛するなどトラウマ(心的外傷)をもった被災者らへ配慮するよう求めたもの。2012年3月1日に、NHKや民放連などに申し入れた。
申し入れ書によると、「被災者住民は震災の耐えがたい記憶が心に刻まれているうえ、将来に対する不安や、放射能被ばくへの不安など多くの問題を抱えているため精神的なダメージが癒やされていない状況が見受けられる」と指摘している。
そのため、津波の映像などが当時を思い起こして精神的に好ましくない影響があるとして、被災者、特に小さな子どもとその家族らへ配慮するよう求めている。
一方、NHKは3月5日のNHKスペシャルで「3.11 あの日から1年」を放送する予定だ。これには「38分間~巨大津波 いのちの記録~」のサブタイトルが付いている。
1年前の3月11日に東日本の太平洋沿岸を襲った巨大津波は、瞬く間に町をのみ込んだ。土煙を上げて崩壊するビルや水に浸かりながら九死に一生を得た人々、家族を助けに戻り命を落とした人など、岩手県釜石市の浜町一帯が巨大津波に襲われる様子を、NHK釜石報道室が撮影した長さ「38分間」の記録を放映する。
NHKは、津波の一部始終をとらえた非常に貴重な記録である、としている。
日本医師会の申し入れに、この番組がどう対応するのか聞いたところ、NHKは「番組は津波にフィーチャーした内容ではありません。170人の住民の証言をまじえて、家族を失い被災した人びとの『その後』を、巨大津波に向き合う記録として綴った内容です。38分間、津波のショッキングな映像が流れるわけではありません」と説明する。
とくにテロップや注意書きを挿入する予定もないという。NHKは2月22日の金田新・放送総局長の会見でも、震災時の映像について「被災者には十分配慮して放送する」と話していた。