尋常ならざる体験を詠む 胸に迫る震災歌集【福島・いわき発】

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   コスモス短歌会福島支部の高橋安子さんから、コスモス福島支部歌集『災難を越えて 3・11以降』をいただいた(=写真)。


   高橋さんとは前に知人と3人で会食したことがある。その知人とは別の、共通の小名浜の知人の勧めがあって、こちらにまで恵送いただいた。


   俳句の震災詠は、浜通り俳句協会が俳誌「浜通り」で特集を続けているので、なじみがある。短歌は新聞歌壇をたまにのぞく程度だから、震災詠を集中して読むのは今度が初めてだ。


   「東日本大震災・福島原発事故の人災に遭遇し、身内を、友人を失い、今なお避難生活をしている身内、障害により不自由な生活を送っている友も」いるという。そうした歌友がそれぞれの思いを歌に託し、歌集にまとめた。一読、巧拙を越えて胸に迫るものがある。尋常ならざる体験を、その後の生活の激変を率直に、正直に歌にしているからだろう。


   大震災といっても、体験は「一人ひとり」だ。一人ひとりまったく違う。俳句と短歌もまた違う。俳句は17音、世界を詠みきるには短すぎると感じる場合がある。短歌は17音プラス14音の分、内面にまで降り立つことができる。両方を読み比べてそんな感想をいだいた。


   1人10首、22人の220首が収められている。A5判50ページ余の小冊子ながら、中身は濃い。粛然として首を垂れる。


津波ゆえ仕事解かれしわが夫よその先その先見えない闇夜(加藤雅江)
桜咲きあんずが咲きて花海棠咲きても気持ちは三月のまま(金成敬子)
いささかはあらむ放射能気にするか 唐黍送らむと子らに訊きたり(齋藤英子)
大震災起きしことなどつゆ知らぬ母の痴呆ぞいとほしむべし(佐々木勢津子)

夕空に虹を見てさえあそこにも放射能少しあるかと思う(高橋節子)
桜に会へず牡丹に友の死に会へず原発の惨われに及びて(高橋安子)
二時間の自宅滞在する中で何よりも先づ位牌を探す(峯岸令子)
父母ねむる故郷に向ひ手を合はす立入禁止の柵の外より(渡部軍治)

(タカじい)



タカじい
「出身は阿武隈高地、入身はいわき市」と思い定めているジャーナリスト。 ケツメイシの「ドライブ」と焼酎の「田苑」を愛し、江戸時代後期の俳諧研究と地ネギ(三春ネギ)のルーツ調べが趣味の団塊男です。週末には夏井川渓谷で家庭菜園と山菜・キノコ採りを楽しんでいます。
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