東日本大震災の大津波被害の教訓を踏まえ、四国では津波に襲われる前に住民を避難させる救命艇配備の検討が始まった。現代版「ノアの箱舟」計画として注目され、2012年夏までに開発や設置のための総費用や救命艇の仕様などの概要を決めることになっている。
2012年2月29日には高知市で第1回「津波対応型救命艇に関する検討会」が開かれ、地元大学の研究者や企業の参加者が意見を交換した。
トイレを付け、食料も数日分を詰め込む
現代版「ノアの箱舟」計画は、東日本大震災の津波で逃げ遅れた多数の住民がいたことを踏まえ、将来発生すると言われる東南海・南海地震の巨大津波に備えようと国土交通省四国運輸局が主体となって進めている。
特に高台に移動するなど身体的、体力的に避難が困難なお年寄りや子供を救助しようというのが狙いの一つで、一隻あたり300万円から400万円かけ、25人から50人乗りの救命艇を太平洋沿岸地域に1千隻配置する。トイレを付け、食料も数日分を詰め込む。設置場所は保育園や老人ホームの屋上を中心にする、などの案が挙がっている。
大型船に設置が義務づけられている救命艇からヒント
中心になっている国土交通省四国運輸局に話を聞くと、このアイデアは運輸局が船舶の管理を担当している中で、大型船に設置が義務づけられている救命艇からヒントを得た。全員が乗り込むまでに数分しか時間がかからず、しかも、救命艇自体に沈みにくいといったサバイバル機能がついている、ということに注目したという。救命艇に関しては、既存のものを津波対策を施し活用するほか、全く新しい救命艇を開発することも視野にいれているという。
「津波対応型救命艇に関する検討会」が29日に高知市で初めて開かれ、出席者からは、「不特定多数の住民が使うことになるため、乗り込む時や、船内で生活するためのルール作りを徹底すべきだ」とか、「最も有効な設置場所を選択するべきだ」などといった議論が展開されたと言う。国土交通省四国運輸局では、
「検討会が始まったばかりで決定事項はありませんが、設置のための総費用や、救命艇の構造などこの夏までには計画を固めます」
と話している。