コーヒーは、今や「国民的飲料」とも言えるほど日本で普及している。かつては「アメリカン」に代表される薄味が定番だったが、近年では濃くて強めの味わいが好まれるようになってきた。スターバックスは、日本上陸以来、深煎りコーヒー市場を牽引。日本人のコーヒーの好みに影響を与えてきた。
缶コーヒーからインスタント、スティック型と飲み方も多様化し、海外スタイルのコーヒー店が続々と登場する中、スターバックスは浅めの焙煎による新商品の発売を発表した。「深煎り」のイメージが強いスターバックスが、あえて「浅め焙煎」で攻勢をかけるのはなぜなのか。
「アメリカン」がかつて日本人の「口なじみ」
社団法人全日本コーヒー協会が実施した、ひとりあたりの1週間のコーヒー消費量調査では、2002年の10.03杯から2010年には10.93杯と増加している。1日1杯以上飲んでいる計算だ。場所は家庭、職場・学校が多く、喫茶店・コーヒーショップがこれに続く。
外出先でコーヒーを楽しむ際、そのスタイルは年とともに変化がみられる。「外食産業マーケティング便覧2011」によると、個人経営の喫茶店・コーヒー専門店は売上高、店舗数とも2004年以降微減が続いている。これに対して、右肩上がりで市場規模が拡大しているのが、スターバックスやタリーズコーヒーに代表される、客単価が400円以上の「高価格型コーヒーショップ」だ。2011年には3月に東日本大震災が発生して消費が落ち込んだが、その影響は徐々に減っていった。引き続き市場は拡大傾向だという。
これら「高価格型」のコーヒーショップが定着するにつれて、消費者の味の好みにも変化が生じてきたようだ。スターバックスコーヒージャパンのコーヒースペシャリスト、江嵜讓二氏は「国内では、20年ほど前まではアメリカンコーヒーのように浅い焙煎のものが一般的だった印象がある」と話す。深い焙煎の豊かで強い味のコーヒーは当時、ごく少数派で「お茶の文化の日本では、浅い焙煎のコーヒーが『口なじみ』として近かったのではないか」と考える。一方、1996年にスターバックスが東京都内で1号店を開店して以降、海外型コーヒーショップが販売する「深煎り」のコーヒーの味も浸透し、近年ではすっかり人気を得ている。
スターバックスの一般的なイメージは今も、「深くて濃い味わい」だ。しかし2012年2月28日、浅めの焙煎による新商品「スターバックスブロンドロースト」を発表した。あえて従来とは違う焙煎レベルのコーヒーを国内で投入することに、関根純最高経営責任者(CEO)は、「お客様の多様な好みにスターバックスでもきめ細かく選択肢を提供したい」と話す。