東日本で最初に「全席優先席」を打ち出した横浜市営地下鉄が、「最優先席」(仮称)を導入することになった。
「本当に席が必要な人に対して、席を譲ってもらえていない」というのがその理由だが、「そもそもの趣旨から外れているのではないか」といった指摘も出ている。
07年調査では「継続反対」過半数
横浜市交通局は、03年12月に全席優先席を導入。すべての人が席を譲りあえる社内の環境をつくることが目的だったが、導入から8年が経ち、その趣旨も形骸化しているようだ。
例えば07年に行われた「全席優先席に関する意識調査」(サンプル数: 881)では、95.7%の人が全席優先席について知っているにもかかわらず、
「市営地下鉄で席を譲っているのを見たことがありますか。譲られたことがありますか」
という問いに対しては、
「滅多に見たことはない。譲られたことはない」(38.6%)
「たまに見る。譲られる」(35.6%)
と、4人に3人が消極的な反応を示し、全席優先席の継続の是非については46.1%が賛成で53.9%が反対。反対が上回ってしまった。継続に反対する人の意見は、
「エリア限定の優先席を設けたほうがいい」(32.1%)
「趣旨はいいが現実的ではない」(23.2%)
と、制度に実効性がないことを指摘するものが多かった。
ただし、11年8月に行ったアンケート(サンプル数: 255)では、
「今後全席優先席の制度をどうすべきと思いますか」
という問いに対して、
「継続すべき」(30.6%)
「広報等に力を入れるなど、浸透を図り継続すべき」(27.1%)
「他社の鉄道と同様に一部優先席とした方がよい」(39.6%)
と、選択肢の表現が変わったこともあって、存続を求める声が過半数となった。このため、今回の「全席優先席を残しながら、さらに優先度の高い座席を設定する」という経緯になった。
11年夏に登場した「携帯電話電源OFFエリア」を衣替え
12年2月7日に発表された12年度の予算概要には、「お客様満足度向上」の一環として「最優先席(仮称)の導入」という項目に約400万円が計上されている。12年夏をめどに、表示の切り替えを順次進めていきたい考えだ。
なお、この最優先席(仮称)は、11年夏に設置された「携帯電話電源OFFエリア」を衣替えする形で設置される。それ以前は、優先席では全席で電源を切ることを求めていたが、「緊急時の連絡が受けられない」「現実に即していない」という声が続出。このため、11年度予算で「マナーモードエリア」と「携帯電源OFFエリア」とを分けるための費用として5460万円が盛り込まれていた。