震災を経て状況が構造的に変わったという指摘
日本はこれまで、大幅な貿易黒字を続け、2010年末の対外純資産残高は国内総生産(GDP)の約半分の251.5兆円に増やしてきた(第2位は中国の167.7兆円)。対外資産からは利子や配当が入ってくるので、所得収支の黒字も増え、経常黒字が雪だるま式に拡大するというメカニズムが働いてきたのだ。
だが、このメカニズムは変調を来している。まず、少子高齢化。「働く人」が減ると「貯蓄する人」の割合が下がる一方、高齢化で「貯蓄を取り崩す人」の割合は上がり、経済全体の貯蓄率が低下し、やがて国内資金が余剰状態から不足状態になっていく。
これがオーソドックスな経済学の常識だが、震災を経て状況が構造的に変わったという指摘が増えている。主な理由は①震災によるサプライチェーンの寸断や電力の制約のよる生産の制約で輸出が震災前のレベルには戻らない、②歴史的な円高も加わって国内生産の空洞化が加速する、③発電燃料を中心にエネルギー輸入が減らない――など。
そうした悲観論の代表格であるJPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミストは、「2002~07年の世界的な景気拡大と円安でかさ上げされていた外需がはげ落ちている」などとして08年の世界的な金融危機の後は構造が替わったと指摘、貿易収支の赤字化により2015年には経常収支が赤字化すると分析(日経2月5日付)。日本経済研究センターも、原発の全面稼動停止を前提に、経常収支は2017年に赤字に転落すると見る。