デリバティブ(金融派生商品)取引の途中解約で不当に高額な解約金を支払わされたとして、大阪産業大学(以下、大産大)が野村証券に約12億8000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地方裁判所が野村証券に約2億5000万円の支払いを命じた。
判決理由は、勧誘の際に為替レートなどによっては解約料が膨らむケースがあることを、野村証券が十分に説明しなかったという、説明義務違反を認定したものだ。
解約料は損失額よりも高い約11億6000万円
大阪産業大学がデリバティブ取引に手を出したのは2008年。判決によると、野村証券大阪支店から勧誘を受けて、契約を結んだ。
当時、私立大学が通貨スワップなどのデリバティブ取引などによる資産運用で多額の損失を被るケースはめずらしくなかった。駒澤大学が07年11月にデリバティブ取引の失敗で154億円もの損失を計上、理事長が解任される事態に至ったのは記憶に新しい。
米サブプライムローン問題の発覚で急激に円高が進行したことや、それによる株価の下落など、運用環境が悪化したときだっただけに、慶応大学や早稲田大学、明治大学など、大学は軒並み資産運用に失敗。大産大も例外ではなかったというわけだ。
大産大が契約したデリバティブ取引は、外貨と円のキャッシュフローを交換する通貨スワップ取引で、期間は10年。外貨が契約時の為替レートよりも円安であれば、大学側がキャッシュを受け取る。半面、契約時の為替レートより円高になるほど支払額(損失)が膨らんでいく仕組み。そこに、さらにレバレッジ(手持ちの資金より多い金額を動かせる投資倍率)を組み込んでいたとされる、かなりリスクの高い取引だったようだ。
その一方、大産大の資産運用の相次ぐ失敗が問題視されたことで文部科学省は09年1月に、資産運用をよりリスクの少ないものに変更するよう促した。
それにより大産大では09年3月に約11億6000万円の解約料を支払って、契約を解除した。取引で発生した損失は328万円だった。
外資系証券マン「解約料が10億円下らないことは推測できる」
大阪地裁は判決で、「勧誘の際に、為替レートなどによっては解約料が10億円を上回る可能性があると説明していれば、大学側は契約しなかった」と指摘し、野村証券の説明義務違反を認定した。損害額は、解約料と取引による損失の合計だ。
ただ、賠償額の算定では、「以前から為替変動リスクのある金融取引で多額の資産運用をしていた」として、大学側にも8割の過失を認めている。
ある外資系証券会社に勤務する証券マンは、「違約金や契約期間(10年)のことを考えると、(契約後)しばらくして解約したとしても10億円を下らないことは、デリバティブ取引をしようという人は推測できる」と、野村証券をかばう。
金融商品取引法では、投資商品のメリットやデメリット、資産運用者のリスク許容度などを考慮して説明するよう定めている。今回の大産大の一件は、大学側の運用担当者が理解しないまま鵜呑(うの)みにしてしまったことや、チェック機能を果たすはずの理事会も知識不足だったことに、付け込まれたということらしい。