「基本的には自己責任です」
深刻なのは、中小企業が集まる総合型の厚生年金基金だ。経営に余裕のない中小企業が集まってつくる企業年金なのだから資金余力は乏しい。場合によっては、基金自体の運営が行き詰まる可能性すらある。
それでなくても、地域などの総合型の厚生年金基金は退職者の増加で年金支払額が膨らんでいる。これに新規加入者の減少と運用利回りの低下が加わり、年金資産の積み立て不足が深刻な悩みになっている。
AIJは「オプションの売りなどで大きな利益をあげる」と評判になっていたとされる。運用成績が低迷するなかで、企業年金がハイリターンを追求した可能性もないとはいえない。
本来であれば毀損など許されないはずの年金だが、運用規制はないのだろうか――。厚生労働省は企業年金の運用について、こう説明する。
1997年12月までは、年金資金は5割以上を国債・地方債などの安全性資産、3割以下を国内株式、3割以下を外国の株式や債券、2割以下を不動産と、「5・3・3・2規制」があった。しかし、「現在、運用規制はありません。あえていえば、企業年金にかかる法律で『分散投資義務』が定められていること」という。
また、「年金基金に運用担当理事を置くことになっているので、運用状況を知らないということはありません」と、運用リスクは把握できる仕組みになっていると強調する。もっとも、虚偽の報告を受けていたとしたら、「その限りではありません」。
一方、金融庁は一般論としながらも、「投資一任契約を結んでいる以上は基本的には自己責任です」と話す。