「名古屋への旅行ボイコットせよ」 河村市長発言で中国側が反発

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   名古屋市の河村たかし市長が、旧日本軍による「南京大虐殺」を否定する発言をしたことで、中国側からは反発の声が高まっている。

   発言内容そのものへの批判に加えて、名古屋への観光旅行をボイコットするよう促すメディアも出てきた。

1978年以来の「友好都市」の交流を凍結

名古屋城は中国人観光客にも定番のスポット
名古屋城は中国人観光客にも定番のスポット

   中国メディアはここ数日、河村市長の発言に対する批判を強めている。中国・南京市の訪問団に対して河村市長が、南京大虐殺について「なかったのではないか」と独自の見解を述べたためだ。

   中国の「新京報」(電子版)は2012年2月23日、南京市が名古屋市との「友好都市」としての交流を当面凍結すると決定したことに関して「中国外務省が『断交』を支持」と報じた。両都市の関係は、1978年以来続いている。名古屋市に問い合わせると、「南京市の公式ウェブサイトで発表されていることは把握している」と話し、現在は担当者レベルで話し合っている最中だという。

   名古屋の観光産業にも影響が出るかもしれない。中国のインターネット上の書き込みや一部の新聞には、「名古屋への観光旅行をボイコットしよう」との主張が見られるという。2月24日付の朝日新聞によると、中国共産党の機関紙「人民日報」系の「環球時報」が23日の社説で、中国のすべての日本ツアーは名古屋を避けるべきだとの提言をしたという。既に一部の旅行会社では、日本の旅行ツアーの募集とビザの手続きを停止したり、名古屋を除外したツアーを組んだりという措置を取り始めたと報じた。

   政府観光局(JNTO)によると、2012年1月に中国から日本を訪れた人数は13万8400人で、前年同月比39.6%増。2011年は東日本大震災以降、一時訪日中国人が激減したが、11月以降は連続して前年同月比で30%台の増加が続いている。これは名古屋でも同じで、市の観光推進室に取材すると、「中国からの観光客が増加傾向にある手ごたえはあります」と話す。名古屋の空の玄関口である中部国際空港は、北京や上海、香港など11都市との間で中国路線が結ばれている。東京から来た中国人客が京都や大阪に向かう途中で立ち寄るケースもあり、名古屋城やトヨタ博物館を見物したり、電化製品を買い物したりして楽しむ人が多い。

「怒っているポーズ」を示す反応にとどまっている

   河村市長の発言を受けて、中国からの観光旅行が急きょ中止になったという報告は、2月24日午前の段階では入っていないと観光推進室は説明する。とは言えデリケートな問題だけに、市側としては「これまでどおり、日中の友好関係を軸に交流が続くことを望んでいます」という。観光客の増加による経済効果の期待もあり、「名古屋ボイコット」が広がって観光産業が打撃を受けるのは避けたいところだ。

   中国事情に詳しいノンフィクション作家の安田峰俊氏は、「あくまで現時点までの情勢を見る限りでは」と前置きしたうえで、「日中関係に深刻なダメージを与える事態には発展しないのではないか」と予測する。これまでの中国側の動きを追う限り、河村市長の発言に対して「怒っているポーズ」を示す、様式美的な反応にとどまっているというのだ。

   一部の中国の旅行社が日本ツアーを取りやめる決定を下した点も、「予測できる反応でしょう」と安田氏。ただ、日本に旅行できるほどの経済力をもつ豊かな中国人については、「震災や原発問題のように、自分の生命に危険が及ぶ理由があれば、彼らはすぐに逃げます。ただ、『河村発言』のようなイデオロギー的な理由で、自分たちが楽しめる日本観光をわざわざ中止するとは考えにくいのでは」と話す。

   事態は基本的には徐々に鎮静化していくだろうと見通しを安田氏は持つ。だが、「中国は一党独裁国家。今回の件が現在以上の大問題になるか否かは、結局は中国当局の『ご機嫌次第』というところでしょう」と語る。

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