ノンアルコールビール市場が活況だ。キリンビールは「キリンフリー」をリニューアルして、ノンカロリー、麦汁100%で香料と人工甘味料を使わない新製法の商品を2012年1月中旬から投入。2月21日にはアサヒビールが満を持して、「ドライゼロ」を発売した。
新商品が続々登場するなかで、「オールフリー」を擁するサントリーは丸の内タニタ食堂の協力を得て、「身体を気遣う人にもノンアルコールビールを」と新たな角度の提案をはじめている。
ビール各社が期待する成長市場
ノンアルコールのビールテイスト飲料が登場して2年半が過ぎて、認知度も向上したうえに新商品が続々と投入され、市場は右肩上がりで拡大している。
サントリー酒類の調べでは、2011年のノンアルコールビール市場は1180万ケース(1ケースは大瓶20本換算)と、前年に比べて18%も増加した。12年は1400万ケース、前年比19%の伸びを想定している。
ビールテイストの嗜好性が高い30~60歳代が好んで飲んでいて、購買比率は男女半々であることが特徴だ。
最近では、アサヒビールが発売した「ドライゼロ」の名称や銀色のパッケージデザインが、同社の主力ビール「スーパードライ」に酷似しているとして、キリンやサントリーが「誤飲が起きる可能性がある」と指摘するなど物議を醸したが、それだけ競争が激化してきた証ともいえる。
東日本大震災の影響もあって、2011年のビール類(ビール、発泡酒、第3のビール)の出荷量は縮小傾向だった。それだけに、ノンアルコールビールは貴重な成長市場で、期待は小さくない。酒税がかからず、利益率が高いこともビール各社には魅力だ。
キリンビールは「キリンフリー」の12年の販売目標を510万ケース(前年比24.4%増)に置いた。サントリーは「オールフリー」を700万ケース(同19%増)に、サッポロビールの「プレミアムアルコールフリー」は200万ケース(同78.6%増)、アサヒビールは新商品の「ドライゼロ」の販売目標を300万ケースとしている。
サントリーは「飲み方」の提案に力を入れる
アサヒビールが「ドライゼロ」を発売し、キリンビールの「キリンフリー」やサッポロビールの「プレミアムアルコールフリー」がリニューアルされるなど、ノンアルコールビール市場が活気づくなか、サントリーは「飲み方」や「飲むシーン」の提案に力を入れている。
丸の内タニタ食堂の協力を得て、タニタ食堂が食事をした人を対象に無料で応じている「健康相談」で、管理栄養士が「黒烏龍茶」と「胡麻麦茶」、「オールフリー」のいずれかを提案するサービスを2月24日以降の毎週金曜日に実施する(3月末まで)。
サントリーは、「お客様のご相談内容にあわせて、適切な商品を提案することで、お客様の体調管理の一助になればと考えた」と、狙いを話す。
サントリーによると、「オールフリー」はノンアルコールのうえ、カロリーや糖質もゼロに抑えていることから、「身体を気遣うお客様にも受け入れられるはず」とみている。