民主党の小沢一郎元代表が、朝日新聞のインタビューに登場した。「ネット番組には出るが、既存メディアは避けている」と評された時期もあったが、ここに来て正面から露出を増やしてきた形だ。その狙いは何なのか。
今回の小沢氏の朝日インタビューは、先の共同通信インタビューに続くものだ。従来、会合などで度々示してきた、野田佳彦首相が実現をめざす消費税増税に反対する考えなどを改めて強調している。
選挙前の「政界再編」に触れる
2012年2月23日付の朝日新聞朝刊は、小沢氏の消費税増税路線に対する「国民の理解を得られない。賛成できない」との発言を1面で伝えた。
野田首相が増税方針のまま衆院解散、総選挙へ踏み切った場合については、「民主党内閣、民主党自身の終わりだ。選挙前の再編を含め、国家が混乱しない方策を考えなければならない」と、「政界再編」にはっきりと触れた。
朝日新聞記事では、小沢氏が「反対姿勢を鮮明にした」ことを受け今後、消費税増税関連法案をめぐる混乱が予想され、国会は「緊迫した展開になる可能性もある」と分析している。詳報は24日付朝刊で行うという。
小沢氏は2月4日配信の共同通信記事でもインタビューに応じており、増税法案への造反を明言した。
民主党内では、鳩山由紀夫元首相も野田政権の消費税増税路線に反対している。一方、仙谷由人政調会長代行は2月5日、NHK番組で、社会保障の財源が「決定的に不足」しているとして、小沢氏らに対し「危機感が弱すぎるのではないか」と批判した。
3月中の消費税増税法案の閣議決定を控え、民主党内の対立が深まりそうだ。
「小沢無罪」の観測で本格稼動?
また、小沢氏の裁判の動向も政局に影響を及ぼしそうだ。政治資金規正法違反の罪に問われている小沢氏の公判(2月17日)で、小沢氏に不利とされた「元秘書の供述調書」が証拠採用されなかったことを受け、「小沢氏の無罪の可能性が高まった」との観測も流れている。小沢氏が動きを本格化させる環境が整いつつあるというわけだ。
小沢氏の「露出増加」について、政治評論家の浅川博忠氏に聞いてみた。
浅川氏によると、小沢氏の動きは今後、活発化してくる。解散・総選挙になれば民主党が下野する可能性がある中、小沢氏は解散させないよう釘を刺しつつ、9月の民主党代表選での「勝利」や、野党との連携で野田首相を「解散ではなく内閣総辞職」に追い込む戦略を描いている。
一方で、「解散・総選挙対策」として、橋下徹大阪市長人気で国政進出へ向け盛り上がる大阪維新の会との連携、「新たな連立政権」も視野に、さまざまな形で野田政権に揺さぶりをかけていきそうだ。
藤村修官房長官は2月23日の会見で、消費税問題で小沢氏らの理解を得る努力をする考えを示した。「党執行部みんながひとつの方向に向け、今後も議論していく必要がある」などと述べた。