韓流アイドル「少女時代」にも楽曲を提供した韓国系米国人の女性ソングライターが、ツイッターで黒人に対する「暴言」を連発し非難を浴びた。
いったんは「謝罪文」を公式ウェブサイトに出したものの、開き直ったような言い回しでかえって火に油を注ぐ形となり、その後本人は「入院」を理由に姿を消したようだ。
「アジア系だから評価される」に猛反発
騒動のきっかけは、米黒人プロボクサーで、現WBC世界ウェルター級王者のフロイド・メイウェザー選手の2012年2月14日のツイートだ。全米プロバスケットボール、ニューヨーク・ニックスのジェレミー・リン選手について投稿している。
台湾系米国人プレーヤーのリン選手は、今シーズン控えからレギュラーに抜擢されると突如才能が開花、2月に入って大活躍を続けており、「スター誕生」とばかりに全米で一大ブームを巻き起こしている。メイウェザー選手は「確かにジェレミー・リンはいい選手だが、これほど大騒ぎになるのは彼がアジア系だからさ」ときわどい発言。続けて「黒人選手が(リン選手と)毎晩同じようにプレーしても、同様の評価は得られない」としている。
この主張自体は根拠がなく、米国でも「人種差別的ではないか」と批判されている。ところが、韓国系米国人女性のジェニー・ヒュンさんによるメイウェザー選手への「攻撃」は度を越したものだった。ヒュンさんは米カリフォルニア州生まれで、歌手として活動する傍ら、2011年には「少女時代」のアルバムに、共作で曲を提供している。メイウェザー選手に向けて、ツイッター上で、
「メイウェザーは、リン選手がアジア系だから失礼なことを言ったのかしら。あなたたちは、『どうすれば人間になれるか』を学んでから出直してきてよ」
と「悪態」をついたのだ。既に問題のある表現だが、これは始まりに過ぎなかった。続けてメイウェザー選手本人に「大バカ野郎。アジア人を敬いな、この礼儀知らずのサル」と大爆発。その後は「あなたたちの文化も、黒人そのものも最悪ね。無礼で凶暴、バカ…」「黒人がいない世の中になったら、生活のすべての面であらゆる緊張感から解放されて、世界は劇的に改善するはず」と、矛先は黒人社会全体に及んでいく。
過去数年にわたって精神的な病と闘ってきた
当然ながら、ヒュンさんの過激な発言の数々には厳しい批判が寄せられた。するとヒュンさんは公式ウェブサイトで「謝罪文」を掲載したのだが、これが逆効果だったようだ。現在では削除されてしまったが、「韓流」の芸能情報を扱う英文サイトには当時の内容が掲載されている。それによると、
「発言内容自体は後悔していません。ただ、越えてはいけない一線があるのだということに気付きました」
と弁解し、黒人社会に向けて公式に謝罪するとした。「一線」が何を意味するかは不明だが、これまでの経緯からヒュンさんが「言ってはいけないこと」を書いた点を指しているのかもしれない。
だがこれでは謝罪になっていないと思われたようで、その後も黒人を中心にヒュンさんに対する怒りは収まらない。すると、とうとう2月19日付で公式サイトにこんな声明が出された。
「ジェニー・ヒュンは本日、病院に搬送されました。本人は妄想型の統合失調症で、過去数年にわたって精神的な病と闘ってきたのです」
そのうえで、「ジェニーによる発言で傷つけた人たちに、彼女の友人や家族は心から謝罪します」と続き、ヒュンさん自身による前日の「謝罪文」は丸ごと削除されていた。ヒュンさんの過激すぎるとも思えるツイートの数々は、心の病気のせいだったという論法だ。
ヒュンさんから楽曲を提供された少女時代は、全米デビューも果たし、これから本格的に米市場で活動していこうとしている。メンバーとは直接関係のない「場外戦」のせいでバッシングの対象にでもされては、とんだ迷惑になるだろう。