東京・渋谷区の代々木公園で見つかったサメの死がいは、約1キロ離れた回転寿司店前に展示されたものであった可能性が高いことが分かった。そして、それまでの経緯は、なんとツイッターで次々に実況されていた。
「通報では事態がのみこめず、実物を見てさらに驚いた」
「渋谷の寿司店展示のサメと同じでは」
警視庁代々木署がこう説明したと報じられるほど、耳目をひく「公園でサメ」のニュースだった。
報道によると、代々木公園を巡回中の警備員が2012年2月19日朝、駐輪場でブルーシートに覆われたサメを見つけ、110番通報した。体長は1・5メートルあり、腹部を切られて内臓が取り出された状態だった。前日夜からの間に置かれたとみられ、代々木署が遺失物として保管するとともに、廃棄物処理法違反(不法投棄)の疑いもあるとみて調べている。
このニュースが流れると、ツイッターでは、渋谷・道玄坂の寿司店の店頭で14日に展示されていたものと同じではないかとの声が上がった。
人通りが多いだけに注目を集め、サメの様子が当時次々にツイートされていたからだ。
店頭では、「サメ展示なう」などの表示で紹介されており、ツイッターでは、「渋谷にサメがいるぞー!!」などとして写真が多数アップされた。表示には、体重は100キロあると書かれ、「石川県の毛鹿ザメ」とされていた。
その後、15日朝になって、渋谷で台車にサメを乗せて押す不思議な外国人男性の姿がツイッターで次々に報告された。投稿写真によると、外国人は胸回りに蛍光ラインの入ったジャンバー様のものを着ており、「この画像シュール過ぎでしょ(笑)」などと指摘されていた。どこに持って行くか聞くと、「持って帰る」と答えたという。
さらに、関係者とみられるツイートで、前出の寿司店がこの外国人に無償で譲り渡したのだと暴露された。責任者不在の中で、現場の判断でそうしてしまったというのだ。
「自称芸術家」の外国人男性に譲り渡す
一連の経緯は、ツイッターのまとめサイト「togetter」で紹介されている。
こうした一般の人たちの追跡ぶりに、ITジャーナリストの佐々木俊尚さんも感心した様子で、「なんとサメ事件の真相が! しかしTwitterは何でも知ってるなあ」とツイートしていた。
指摘された渋谷・道玄坂の寿司店に取材すると、運営会社の社長は、こうした経緯をほぼ認めた。
テレビの映像を見ると、代々木公園で見つかったサメは、店頭で展示していたものと一致する可能性があることが分かった。サメは、2012年2月14日に食用として内臓が除去された状態で東京・築地市場で仕入れたが、来店客が多くて店内奥の調理場に運べずに店頭展示したそうだ。
翌15日早朝の閉店後に処分する予定だったものの、「自称芸術家」の外国人男性が「処分するぐらいなら、芸術に役立てたいので譲ってくれないか」と申し出た。そこで、現場の判断で閉店時間ごろにサメをこの男性に譲り渡した。
その後、サメを載せた台車の写真がツイッターに投稿されているのを社長が知った。男性に譲った話を聞いて不安に思い、ポスターを店頭に張るなどして情報提供を呼びかけた。しかし、予感は的中してしまったという。
社長は、「正直、憤慨し、困惑しています」と不法投棄された可能性があることを嘆いている。
一方、警視庁の広報課では、取材に対し、「発表事案ではありませんので、何もお話しできません」と言うのみだった。