厚生労働省の調査で、沖縄県が全国で肥満度1位という結果が出た。男性に関するデータだが、約2人に1人は肥満ということになる。
食生活の変化や車中心の社会環境といった要因が考えられ、沖縄県でも健康づくり運動を進めている。「長寿県」のイメージが強い沖縄だが、男性の平均寿命は今や全国平均を下回っている。
手間をかけた伝統料理つくらなくなった
厚労省が2012年1月31日に公表した「国民健康・栄養調査結果の概要」によると、体格の指標「BMI値」で「肥満」と判断される数値を上回った割合は、男性30.4%、女性21.1%となった。男性の場合、肥満度が最も高い年齢層は50~59歳で、40~49歳がこれに次ぐ。
都道府県別にみると、男性20~69歳で肥満者の割合が最も高いのが沖縄県で、45.2%。最も低い山口県の22.1%の倍以上で、全国平均をも大幅に上回る。これは2006~10年の5年間のデータから割り出した結果だ。
沖縄県福祉保健部健康増進課に取材すると、「食生活の変化がひとつの要因ではないか」と話す。県で具体的なデータをとったわけではないが、伝統的な沖縄料理の代わりに外食やコンビニで購入しての食事機会が増え、また「沖縄は本土よりも早期に、ハンバーガーのような欧米型の食生活が入って来た」ことも影響しているとみる。
かつては家庭で調理する際に時間をかけて煮込んで脂肪を除くような手間を惜しまなかったが、今では生活スタイルの変化とともに「手のこんだ料理をつくらなくなった」というのだ。
以前にも同様の指摘がなされていた。インターネット上に公開されていた沖縄県医師会の2006年10月号会報を見ると、内科医で生活習慣病が専門の田仲秀明医師は、脂肪分の多い食事や、交通手段が車中心で徒歩の機会が少ないといった「欧米型生活習慣」の定着による肥満の増加を懸念している。また、沖縄は周囲が海にもかかわらず、戦後一貫して魚介類の摂取が少なく、肉類をとる割合が全国平均を3~4割上回っている点も挙げた。
1980年には平均寿命で男女ともに全国トップとなり、1995年に「世界長寿地域宣言」を出すなど、「健康長生き」のイメージが強かった沖縄県。だが、実は男性の平均寿命は2000年に、全国平均をも下回って47都道府県中26位に急落し、「26ショック」「沖縄クライシス」と言われた。2005年の調査でも、女性はトップを維持したが男性は25位にとどまっている。
心疾患や糖尿病が全国ワーストに近い
沖縄の男性の肥満と平均寿命の伸びの鈍化は、関係が深そうだ。県の健康増進課は、「元気な高齢者が多い半面、40~60代の死亡率が高い」と説明する。県が発行する「健康おきなわ21」によると、この年代の死因として心疾患や糖尿病が全国ワーストに近い。つまり、働き盛りの男性が「生活習慣病」により命を落とすケースが少なくないようだ。いわゆる「壮年期」の男性の死亡率が高いことにより、長寿の高齢者が多くても結果的に平均寿命を押し下げてしまうのだという。
太平洋戦争の終結後、沖縄は米軍の占領により肉食文化がいち早く定着した。本土復帰前の1963年には、「日本初」の米国スタイルのファストフード店「A&W」が開店している。戦後に生まれた現在60代以下の人たちは、70代以上の世代と比べて食生活の欧米化が進んだに違いない。
県では現在、「健康・長寿沖縄の維持継承」「平均寿命の延伸」を目標に健康増進のさまざまな取り組みを実施中だ。2012年7月には中間報告がまとめられる予定で、それに基づいて「今後何をしていくべきか検討することになる」(県健康増進課)という。