韓国のプロバレーボール男子リーグで、八百長問題が大騒動となっている。現役選手や元選手、ブローカーらが逮捕され、関与を認める供述をしたという。
背景には、違法な賭博サイトを運営する業者やブローカー、暴力団関係者の暗躍があるようだ。1年前にもプロサッカーリーグで不正が発覚しており、他のプロスポーツにも拡大する可能性がある。
原因は「兵士チーム」の選手の安月給か
韓国の主要紙「中央日報」(日本語電子版)は2012年2月8日、バレー男子「Vリーグ」の2009~10年シーズンの試合で不正行為があったとして、現役選手とブローカーの2人が検察当局に拘束されたと伝えた。以後「事件」は拡大し、他の選手や元選手も八百長に関与したとして次々に逮捕された。
さらに2月17日付「朝鮮日報」(日本語電子版)によると、バレー女子でも2人の選手が検察の事情聴取を受け、八百長をした事実を大筋で認めたという。ブローカーから金銭を受け取り、試合中にわざと手を抜いてミスをした疑いがもたれている。火の粉は他のプロ競技にも及び、韓国プロ野球やバスケットボールでも選手による八百長行為が行われているとの報道も流れた。
実際にどう不正をしたのかを見分けるのは難しい。2月17日放送のフジテレビ「とくダネ!」では、バレーボール男子元日本代表の川合俊一氏が、問題とされた韓国選手がプレーする映像を検証した。守備専門の「リベロ」と呼ばれるポジションでボールを追う姿を見たものの、「八百長じゃないと言われれば八百長じゃない」と話す。それほど巧妙に「真剣さ」を演じていたのかもしれない。
関与が疑われている選手の共通点は、「尚武」というチームに所属しているか、過去にプレーしていた点だ。実は尚武は韓国軍の体育部隊で、兵役中の選手もいる。プロリーグに参加しているが、選手の給料は一般の兵士と同額で、どちらかといえば「薄給」の部類に入るようだ。韓国人のスポーツジャーナリストはJ-CASTニュースの取材に、「プロ選手と比べて収入の差があまりにも大きいことが、八百長に加担した大きな原因ではないか」と話す。
韓国プロサッカーリーグ「Kリーグ」にも同様に「尚武」が加盟しているが、2011年にKリーグをめぐる大規模な八百長騒動が起きた時も、この「軍人チーム」の所属選手が関与していた。「たった1試合で1か月分以上の金銭を手にできる誘惑に、つい乗ってしまったのかもしれない」と、韓国人スポーツジャーナリストは考える。
不正のバレー選手には永久追放処分
「朝鮮日報」は、韓国プロスポーツ界に潜む八百長構造の闇について、2月15日付記事で解説している。ブローカーは、選手に八百長プレーをさせる代わりに金銭を提供する一方、暴力団関係者に八百長情報を売って対価を手にする。ブローカーを雇うのは、違法な賭博サイトと結託する「胴元」で、ブローカーは八百長の指示内容とそのための「軍資金」を得て選手らを巻き込むのだ。八百長が成立すれば、情報を得てかけをした暴力団員には大金が転がり込む。一方、何も知らず賭博サイトを利用した人たちは損する仕組みだ。同紙によると、選手ひとりが1試合に得る金額は300~500万ウォン(約21~35万円)程度。いったん八百長に手を染めた選手は抜け出せず、後にブローカーに落ちていくしかないという。
しかし、不正行為が明るみに出ればその代償は大きい。今回の男子バレーのケースでは、韓国バレーボール連盟が、関与したと見られる現役選手に対して永久追放の処分を下すと決定した。チームも解散の危機にひんしている。
ほかのプロスポーツへの波及も心配だ。「中央日報」は2月16日、検察当局が、八百長疑惑がもたれている韓国プロ野球の選手に対して所属球団が独自調査を実施したと報じた。本人は関与を否定したという。
前出の韓国人スポーツジャーナリストは、「プロ野球は韓国のプロスポーツで最も人気が高い。仮に八百長があったと分かれば、スポーツ界全体にとって大変な打撃になる」と懸念する。注目が集まるプロ野球でひとたび「インチキ」が行われていると見破られれば、「ファンは選手のプレーに疑いの目を向けるようになるかもしれません」。
日本では2011年2月に大相撲の八百長問題が取りざたされ、現役力士と親方25人が引退、解雇処分を受けた。その後、本場所は開かれるようになったものの、観客席に空席が目立つ日があるなど苦戦が続く。韓国でも、人気プロスポーツでの不正が拡大していけば、ファン離れが加速することが容易に予想できる。