今年は衆院解散・総選挙の年。のはずだった。しかし、橋下徹大阪市長が率いる大阪維新の会が国政進出の動きを本格化させる中、解散機運は立ち消えになりそうな気配が出てきた。
総選挙になれば、維新の会が大躍進し、民主党も自民党も惨敗してしまう可能性が強まってきた。支持率低迷が続く2大政党は、党内でもギクシャクしており、その足もとは覚束ない。
6月解散説が「一番可能性高い」が…
2012年の1月には、12年中の解散・総選挙を想定する新聞記事が相次いだ。消費税増税をめざす野田佳彦首相が、ねじれ国会の中で行き詰まったり、自民党などとの「話し合い解散」に応じたり、といったケースが指摘され、解散時期は、「12年度予算成立後の4月」説や、「国会会期末の6月」説がささやかれていた。
ところが、
「ここに来て、(解散を)もっと延ばした方がいいんじゃないか、という声が出ている」
情報番組「みのもんたの朝ズバッ!」(TBS系、2月14日放送)で、杉尾秀哉・TBS解説委員室長はそう指摘した。
6月解散説が「一番可能性が高いと言われている」が、衆院選になれば、「維新の会がものすごく躍進」し、「自民も勝てない、民主も勝てない」という事態も考えられるからだという。橋下人気の「ほとぼりが冷める」のを待とうというわけだ。
維新の会は、「衆院選の候補」予備軍ともいえる政治塾に塾生を募集し、2月末に衆院選公約集「維新版船中八策」の公表を予定するなど国政進出への準備を進めている。塾への応募が3300人を超え、その注目度の高さを見せつけた。
杉尾氏は、「(解散を)やるならもっと早く」という声があることも指摘した。「態勢を整えられると勝てない」からその前に選挙をやってしまおうという発想だ。
一方で、最大野党の自民党は現在、「挙党態勢で民主党を解散に追い込む」という空気でもない。
「支持政党なし」は「過去最高」68.2%
2月15日には、自民党の中堅・若手議員らが谷垣総裁と会い、「民主党の失点続き」の中、自民党支持率が伸び悩んでいることについて、相次いで苦言を呈した。
16日には森喜朗元首相が、自民党の新ポスターに写った谷垣総裁について、「なんであんなに顔が暗いのか」と痛烈に批判した。
谷垣禎一総裁は、「消費税増税自体には賛成だが、『マニフェスト違反』の民主党が消費増税を決めるのはけしからん」という論法で民主党を解散に追い込もうとしている。だが、森元首相は、2011年末から消費税増税の与野党協議に応じるべきだとの執行部批判を繰り返しており、谷垣総裁とは立場を異にする。
不協和音が公然化し始めたことで、党内では「谷垣降ろし」の可能性もささやかれている。
民主党の方も「挙党態勢で選挙を受けて立つ」という状態ではないようだ。輿石東幹事長が12年2月16日夜、消費税増税に反対する小沢一郎元代表と鳩山由紀夫元首相と意見交換した際、鳩山氏は「このままいったら党が大変になる」と述べた、と毎日新聞などが報じた。消費増税をめぐる党内対立は根深いようだ。
時事通信が2月16日報じた世論調査によると、政党支持率は自民党12.3%、民主党10.1%だった。いずれも、前月比で数字をやや下げている。維新の会と政策的に近いとされるみんなの党は1.7%。一方、「支持政党なし」は68.2%と、1960年の調査開始以来、最も高い数字となった。
維新の会は、無党派層を主なターゲットにしている。NHKが2月13日伝えた世論調査では、「維新の会と連携し、政界再編を模索する動き」があることについて、「大いに期待する」25%、「ある程度期待する」43%と、合わせると7割近くが「期待」している。
2012年中の衆院解散・総選挙はあるのだろうか。衆院議員の任期は2013年8月までだ。