「中長期的な物価安定の目途を明示したことは、日本銀行としての判断であって政治的な圧力に押されたわけではない」
日本銀行の白川方明総裁は2012年2月17日、日本記者クラブで「デフレ脱却へ向けた日本銀行の取り組み」について講演し、質疑応答の中でこう強調した。
日銀は2月14日の金融政策決定会合で金融政策運営において目指す物価上昇率を意味する「中長期的な物値安定のメド」(Price Stability Goal)を当面1%とすると公表した。インフレ目標とも受け取れる文言ともいえる。
日銀の自主的判断であることを強調
日銀は、2006年3月に「中長期的な物値安定の理解」という名称で物値安定の数値表現を導入した。しかし具体的な数値表現については個々の政策委員が物値安定と考える値を幅で示す手法で、米連邦準備理事会(FRB)が1月25日に2%の長期的な物値目標(ゴール)を定めたのをきっかけに、与野党から日銀の姿勢はわかりにくいという批判が噴出した。
日本では長期間にわたって低い物値上昇率が続く一方、成長力強化への取り組み成果があがっていないとして経済界の不満が強く、FRBの緩和政策の長期化でさらなる円高圧力につながりかねないとの懸念が出ていた。今回の日銀の決定の背景にはこうした日銀への批判に応える必要があった。
しかし白川総裁は改めて日銀の自主的判断であることを強調するとともに、「日銀の金融緩和政策は金融の緩和環境を実現するうえでは成功している。日銀は個別産業をすべて知っているわけではない。成長力を高めるには様々な努力があいまって効果がある」として金融政策だけでインフレ目標が実現するわけではないことも指摘した。