春の選抜の21世紀枠で甲子園に初出場する宮城県立石巻工業高校が、約5000万円の協賛金を募っていることが、ネット上で波紋を呼んでいる。高校側は被災地の事情を説明しているが、なぜそんな高額出費を求めるのかという疑問もあるようだ。
震災では、石巻市の中心部近くにある石巻工業高校周辺も、大きな津波被害に遭った。
日本高野連からは最大でも150万円
石巻工OBや地元企業の多くも被災者となり、そこからの寄付金だけに頼れない状況になった。石巻工の甲子園出場実行委によると、それでも、全校生徒500人近くが応援に行くなどで、出場に約5000万円がかかる試算結果が出てしまったというのだ。
これまでに集まったのは、目標の半分にも満たない約2000万円だ。そんな中で、市から1000万円の補助金が出たほか、石巻商工会議所も地元企業などから2000万円を募ることを決めたというが、目標額達成の見通しは厳しいままだという。日本高野連からは、主要メンバーの交通費や滞在費しか出ず、最大でも150万円ほどしかならない。
こうした状況で、新聞各紙に、実行委が全国から協賛金を募っているとの記事が出た。ところが、5000万円が必要と報じられ、ネット上では、その額の多さに疑問の声が相次ぐようになっている。
「どういう試算?かかりすぎだろ」「応援団なんて自腹で行けよ」「監督とベンチ20人だけで行けばいいじゃん」
5000万円の根拠について、実行委の説明によると次のようになる。
甲子園までバスを13、4台連ねていくため、往復で700~800万円はかかる。メガホンなどの応援グッズを約2500人分用意すると、1000万円強に。さらに、部員や全校生徒の滞在費や試合用ボール・ユニフォームなどの用具費で3000万円近くが概算でかかることになり、甲子園入場料なども入れればそれだけの出費になるというのだ。
高校側「甲子園では、どこも全校応援」
ネット上で疑問が出ていることについて、石巻工甲子園出場実行委の担当者は、「甲子園では、どこも全校応援をしています。うちの学校は被災しましたので、頑張れと皆さんから応援してもらっています。初めてのことですし、どこまで勝ち進むのか分かりませんので、協賛金は多い方がありがたいと思っています」と話した。
もしお金が余った場合については、「野球関係に使うのではと思いますが、実行委で使い道を考えることになると思います」としている。
多額の出費について、日本高野連の広報担当者は、何人が応援に行くかどんな応援かによって額は変わるとしたうえで、「交通費・滞在費の補助は出ますが、それ以外の応援については、いくらかかるか分かりません。調べたこともありませんし、学校に聞いて下さい。それ以上はノーコメントです」と話した。
高校野球に詳しいスポーツジャーナリストの菅谷齊さんは、こう言う。
「甲子園に出れば、やはりそれだけのお金はかかるでしょうね。1回勝つごとに、1000~2000万円、決勝まで行けば、1億円かかる可能性もあります。公立高校なら、3年連続で出場すれば、お金が持たないぐらいです」
石巻工のケースについては、「そもそも出場校を選ぶ側が、被災地の学校なのでお金が集めにくいということを頭におかないのは、おかしいと思います」と指摘している。