経営再建中の日本航空(JAL)は2012年2月15日、12~16年度の中期経営計画を発表した。自らを「フルサービスキャリア」と位置づけ、台頭する格安航空会社(LCC)と差別化。さらに次世代中型旅客機のボーイング787型機など新機材の発注数を増やし、LCCが苦手とする欧米や東南アジア路線をはじめとした中長距離路線に経営資源を集中投下する。
新機材購入に4780億円を投資
計画では、「5年連続営業利益率10%以上、16年度末自己資本比率50%以上」を目指す。5年間で500億円のコスト削減を目指し、人員は現状の3万2000人規模を据え置く。
10年1月の経営破たんから縮小路線をたどってきたJALだが、今回の経営計画では成長路線に一転。グループ全体で4780億円を新機材に投入する。特にボーイング787型機については、発注機数を35機から45機に大幅に増やした。需要の伸びが見込めない国内線の旅客輸送能力は、ほぼ横ばいを見込んでいるものの、国際線旅客については、16年度には11年度比で25%増強する。燃費の悪い大型機や旧型機の退役を進め、収益性を高めたい考えだ。
787については、12年12月に成田-サンディエゴ線、13年3月に成田-ヘルシンキ線を開設することが新たに発表された。ただし、一部の787をめぐってはボーイング社の製造過程で後部部品の不具合が明らかになったばかり。記者会見の直前に就任したばかりの植木義晴新社長は、
「ボーイング社は、『短期的には安全上の問題はない』としているが、当社としてはしっかり修理をしていただき、安全かつ、完全・完璧な形で787を受領したいと考えている」
と述べ、従来は「2月~3月中」だった納品の時期が「3月末」にずれ込むことを明らかにした。
「JALの社員は末端の人を含めて純真な人が多かった」
本来ならば、787は3月末に羽田-北京線、成田-デリー線、成田-モスクワ線に投入されることになっていたが、納入遅れにともなって4月下旬以降に延期されることになった。ただし、4月22日に新設される成田-ボストン線は、予定通り787を就航させたい考えだ。
会長から代表権のない名誉会長に退いた稲盛和夫氏は、2年間の会長時代の業績の回復について、
「今までは、経営は本社の一部がやるものだと思われていて、あとは経営に無関心な人で構成されていた。そうした中で、『全社員が心血注いで経営するのが企業』だということを全社員に訴えてきた。驚くことに、JALの社員は末端の人を含めて純真な人が多かった。倒産して地獄を見た人が多かったということもあって、これまでの考え方、受けみの経営姿勢から、『会社の経営を盛り上げていこう』と変わったことが大きい」
と振り返った。