大阪市の橋下徹市長が、次の衆院選の公約集「維新版・船中八策」の骨格を示した。憲法改正が必要な「首相公選制」などを盛り込んでいる。
既成政党や政治記者からは、実現性に疑問を示す声が出る一方、テレビ情報番組では好意的な「街の声」も紹介された。もっとも、政策自体ではなく「橋下人気」現象に対しては、懸念を示す「街の声」もあった。
時事通信解説委員「ちょっと恥ずかしいような不完全なもの」
橋下市長は2012年2月13日夜、大阪維新の会の非公開会議で「維新版・船中八策」の骨格を示した。今後、会の中で議論を詰め、2月末に公表する。
「船中八策」は、幕末の志士、坂本龍馬が示したとされる、「大政奉還」など8項目の「新国家基本方針」だ。今回骨格が示された「維新版」はこれにちなみ、統治機構改革や憲法、教育改革など8つの柱で構成している。
憲法改正が必要な首相公選制や「参議院を廃止し、地方自治体の首長が国会議員を兼務する新しい院の創設」などを盛り込んでいる。道州制導入も挙げている。
翌2月14日、安住淳財務相は、「理想の話と、明日あさってどうするかが全く混在している」と「八策」について批判した。
自民党の石原伸晃幹事長も14日、「言うのは簡単だが、憲法改正などのプロセスがないとなかなか成就はしない」と実現性に疑問を示した。「民主党のマニフェストよりひどい」と話す自民党参院議員もいる。
14日放送の情報番組「みのもんたの朝ズバッ!」(TBS系)では、時事通信解説委員の田崎史郎氏が、憲法改正の必要がある主張が含まれており、「ハードルが高い」と指摘した。
また、政策の達成期限や「数値」も盛り込まれていないとして、「マニフェスト(政権公約)と言うにはちょっと恥ずかしいような不完全なもの」と切って捨てた。
首相公選制「やってみる価値がある」と街の声
もっとも、橋下市長は、現状のマニフェストのあり方には批判的だ。数値目標や政策を具体的に並べ過ぎており、政治家の裁量を縛っていると考えているようだ。
朝日新聞の2月12日付朝刊インタビュー(オピニオン面)では、橋下市長は「選挙では国民に大きな方向性を示して訴える。ある種の白紙委任なんですよ」と述べている。
14日の「朝ズバ」では、東京・新橋などの「街の声」も紹介した。新橋では、スーツ姿の男性が、「八策」にある「参院廃止」に賛成の考えを述べ、若い女性も「首相公選制」について、「やってみる価値がある」と話した。
一方、橋下市長らの「言っていることが独走しないか」と懸念を示す眼鏡姿の男性もいた。
テレビ朝日系の「モーニングバード!」(14日)では、「大阪府民30人」にきいた、「橋下市長の考え」への意見を伝えた。「支持する」が16人と最も多く、「支持しない」は4人。残る10人は「分からない」だった。
さらに大阪市の「街の声」として、「首相公選制」を実現すれば「みんなの意見が反映するようになるかも」と話す20代女性や、橋下市長について「結果出している」「なんかやってくれへんかなあ」と漠然とした期待を持っている20代男性らの意見を伝えた。
いずれにせよ、示されたのがまだ政策の「骨格」とあって、反応も印象論が多いようだ。
インターネットのツイッターをみると、橋下市長の「八策」について、「賛成」との好意的意見や、「期日も数値も入ってない」という批判の声も寄せられている。
2月末に発表される「維新版八策」は、どんな姿になるのか。