東京株式市場で2012年2月8日、幅広い銘柄に買いが先行し、日経平均株価は終値で約3カ月ぶりに9000円台を回復した。さらに14日、日銀が追加の金融緩和策を発表したため、これがどの程度株価を押し上げるかが注目される。
世界で進む金融緩和で投資家のリスク回避姿勢が和らいでいる流れに日本も乗った形だ。ただ、世界的に見ると1ドル=70円台後半の歴史的な円高、という足かせをはめられた日本株の出遅れは鮮明だ。
一時的にリーマン・ショック後の高値を更新した米株と異なり、1年前の東日本大震災直前の水準(2011年3月10日の日経平均終値1万434円38銭)も遙か遠いとの見方が支配的だ。
世界的な金融緩和も株高を後押し
8日の東京株式市場は、前日の米株高もあり、トヨタ自動車をはじめとする主力の輸出関連銘柄など東証1部全体の77%にあたる1281銘柄が値上がりした。日経平均株価は前日比98円07銭高の9015円59銭で引けた。終値としては11年10月28日(9050円47銭)以来となる9000円台回復。週末9日は55円07銭安の8947円17銭と反落したが、週明け13日も一時9000円を回復した(終値は8999円18銭)。
日本株上昇の背景には世界的な景気回復期待が広がり、世界の株式市場に資金が流入していることがある。実際、米国の経済指標で最重視される雇用統計(1月分=2月3日発表)が、非農業部門の雇用者数で前月比15万人増程度とみられていた市場の大方の予想を大幅に上回る24万3000人増となるなど、期待を高める指標の発表が相次いでいる。日銀も、2月14日の金融政策決定会合で、追加の金融緩和に踏み切ることを決めた。ギリシャなどヨーロッパの信用不安や円高の悪影響で、景気のてこ入れが必要になったとしている。
世界的な金融緩和も株高を後押ししている。欧州中央銀行(ECB)は昨年末に大規模な資金供給に踏み切り、欧州金融機関の資金繰り悪化懸念が大幅に後退。米連邦準備制度理事会(FRB)は今年1月、事実上のゼロ金利政策の延長を決定。FRBは景気が減速した場合には「量的緩和第3弾」(QE3)に踏み切る姿勢も示唆した。こうしたことが、世界の投資家の11年夏以来の「リスク資産回避姿勢」を、「リスクオン」と呼ばれる積極姿勢に転換させる現象を生じさせている。
ただ、米国債が初めて格下げされ、欧州危機が再燃したことで「世界同時株安」に陥る前の11年7月末の株価と、2月10日の株価を比較した戻り具合を見ると、日本株の出遅れははっきりしている。
ニューヨークダウはリーマン・ショック後最高値に近い水準
日経平均株価がマイナス9.0%なのに対し、景気回復基調が鮮明な米国・ニューヨークダウ工業株30種平均はプラス5.4%とリーマン・ショック後の最高値に近い水準に復活。欧州にありながらユーロ圏外で欧州危機の影響が小さい英国(FTSE100)もプラス0.6%と水面上に浮上している。
欧州危機の懸念が薄らいだことで、ユーロ圏諸国でも、ドイツ(DAX)がマイナス6.5%、フランス(CAC40)がマイナス8.2%とマイナス幅は日経平均を下回る。ただし、国の信用度も問われているイタリア(FTSEMIB)はマイナス11.2%と日経平均を大きく下回る水準だ。
アジアでは韓国総合指数がマイナス6.5%、香港ハンセン指数がマイナス7.4%、シンガポール(STI)がマイナス7.2%とおおむね日経平均よりはましだ。
日経平均の回復がもたついている理由はどの市場関係者に聞いても「まず円高」との返答だ。円は対ドル、対ユーロとも歴史的な高水準にあり、輸出関連企業が主力の日本株にとってかつてない重荷となっている。日本政府も市場介入で対ドルの最高値更新は防いでいるが、反転の切り札にはなり得ておらず、当面は日本株にとって上値の重い展開が続くとの見方が強い。