ソニー、パナソニック、シャープなど大手電機メーカーが相次いで2012年3月期に大幅な赤字に陥る見通しを発表し、日本の電機業界の苦境が浮き彫りになった。中でも低迷が目立つのが、外部委託先も含めて国内外で1万人を削減する方針を発表したNECだ。
「市場に対する見込み違いに加え、製品力がなかった」。NECの遠藤信博社長は12年1月下旬の決算発表会見で、携帯電話機事業の「完敗」を認めた。スマートフォン(多機能携帯電話)の普及にはまだ時間を要するとの読みは完全に外れ、製品投入が出遅れた。
2009年にも2万人規模の人員削減を実施
投入後も、米アップルのiPhoneや韓国・サムスン電子のギャラクシーに押され、もともと存在感のない海外はもちろん、国内でもシェアを獲得できなかった。2012年3月期の携帯電話の出荷計画は当初の740万台から下方修正を繰り返し、500万台にとどまる見込みだ。
構造改革の遅れを指摘する声も多い。NECは2010年、日立製作所とカシオ計算機の携帯電話機事業を統合したNECカシオモバイルコミュニケーションズの業務を開始したが、「人員や重複業務のスリム化は進んでいない」(関係者)。製品販売でも効率化でも後手に回り、携帯電話機事業は2012年3月期に営業赤字になる見通しだ。
NECは2009年にも、リーマン・ショック後の世界経済の悪化を受けて2万人規模の人員削減を実施した。
社会インフラ事業や企業向けITサービスなどに注力
国内首位のパソコン事業を中国のレノボ・グループが過半数を出資する合弁会社へ切り離したほか、中小型液晶パネル製造子会社の株式の7割を中国大手へ売却。韓国や中国、台湾勢などとの価格競争に敗れ、かつての花形事業を次々に縮小した結果、ピークの2001年3月期に5兆円を超えていた売上高は、2012年3月期は6割弱の3兆1000億円に縮む見通しだ。
NECは今後、環境配慮型都市(スマートシティ)などの社会インフラ事業や企業向けITサービスなどに注力し、価格競争の激しい消費者向け製品から企業向けビジネスに軸足を移す考えだ。しかし、社会インフラなどの分野は既に国内外大手の主戦場と化しており、「出遅れ感は否めない」(アナリスト)。スピード感のない経営を続けたツケは大きく、新たな「飯の種」を早急に確立しなければ、縮小均衡さえ危うい事態になりかねない。