大阪市交通局の職員労組が、人事上の不利益をちらつかせて、職員に市長選での協力を強要していた疑いが報じられている。
労組側はすべて否定しているようだが、橋下徹市長は、組合が人事権を握っている可能性について言及している。
リストの欄外に「脅し文句」
「正直、恐怖を覚えました。ヤクザと言っていいくらいの団体だと思う」
職員労組の疑惑を最初に報じたテレ朝系のニュースで、内部告発した大阪市交通局の男性職員はインタビューにこう答えていた。
告発を受けた地域政党「大阪維新の会」などによると、この男性は、交通局内の職場で大阪交通労働組合(大交)の代議員をしている職員がある書類を捨てようとしたのを見て、後にそれを回収した。
市長選当時、大交は、現職・平松邦夫氏の後援会が当時作成した「知人・友人紹介カード」を職場で配っていた。男性によると、書類は、職員の協力をチェックするための大交作成の「配布回収リスト」だというのだ。
リストには、交通局職員の3割に当たる1800人ほどの名前と配布済み・回収済みの記入欄があった。そして、リスト欄外には、こんな脅し文句の指示が書き込まれていた。
「非協力的な組合員がいた場合は、今後、不利益になることを本人に伝え、それでも協力しない場合は各組合の執行委員まで連絡してください」
「不利益」とは、人事上の制裁を意味するとされる。リストには、非組合員の管理職も含まれていた。
報道によると、大交幹部は、リストの存在に驚いた様子をみせ、事実無根だとその存在を否定した。文言が通常の使い方と違うという。大阪市交通局の広報担当者も、取材に対し、リストの事実関係は分からないとし、市が今後調べることを明らかにした。人事上の制裁については、「組合は、人事異動に介入できないことになっています。介入は基本的にないと思っていますので、なぜ書き込まれたのかは分かりません」と言う。
組合が市の幹部まで支配していた?
しかし、大阪維新の会代表の橋下徹市長は、職員労組のリスト作成疑惑について、「組合が人事に関与しているということ」とツイッターで示唆した。さらに、交通局幹部の人事権まで握っている可能性に言及し、「一体どちらが上司なんだ?」と疑問を呈した。
そのうえで、労組適正化条例案を提出する自らの考えを強調した。
今回は、大阪交通労働組合がその強大な権限で、職員らを違法行為に巻き込んでいた疑いまで指摘されている。
リストには、名前に7ケタの職員コードが添えられ、それは非組合員の管理職も含まれていた。管理職のコードは、大交では知り得ない情報であるため、内部から漏れた可能性がある。市交通局の広報担当者によると、もしこれが事実なら、個人情報保護条例に抵触することになり、処分の対象になるという。
また、管理職の名前の後には、知人・友人紹介カードを回収済みと記入されたケースが見つかった。広報担当者によると、交通局係員は公営企業職員として一定の政治活動が認められているが、管理職は認められておらず、本当なら地方公務員法に抵触する。
男性職員から告発を受けた杉村幸太郎市議は、取材に対し、「情報は、当局サイドから抜かれたか流出したかは間違いないと思います。組合をはめようとした、組織的にやっていた、などと見方は違っていますが、本当なら懲戒免職、刑事事件になるでしょう」と指摘する。
大交に取材しようとすると、対応できる書記長が外出中だとして話が聞けなかった。