大手生命保険各社が、外国の保険会社に対する大型のM&A(合併・買収)を含め、海外展開を加速している。
国内事業が人口減少で伸び悩んでいることから、 円高を追い風に、成長が見込まれる新興市場を中心に海外事業に活路を見いだそうとしている。
信用不安の欧州にも進出
日本生命は2012年1月、インドの有力財閥、リライアンスグループ傘下の資産運用会 社リライアンス・キャピタル・アセットマネジメントに、約220億円出資することで合意した。リライアンスは投資信託の預かり資産残高が約1兆2000億円とイ ンド2位で、公的年金の運用も手がける。
昨年10月、同グループ傘下の大手生保、リアイアンス・ライフに約480億円出資したのに続く提携強化で、日生は出資後、リライアンス社に取締役1人を派遣。現地で主流である銀行窓口での保険販売だけでなく、営業職員による日本式の販売方法も取り入れ、成長が見込めるインドでの収益拡大を目指す。
明治安田生命は、ドイツ保険大手のタランクスと共同で、ポーランド第3位の保険会社、オイロパ・グループを6月までに約330億円で買収する。タランクスが 過半数の株式を握り、明治安田は30%程度の取得を目指す。オイロパの2010年の 保険料収入は1000億円弱。ポーランドでは、生命保険市場が毎年10%以上伸びており、ヨーロッパの信用不安が広がる中でも、今後も成長が見込まめると判断した。
第一生命は、昨年5月、豪州の大手生保、タワー・オーストラリア・グループを約1000億円で買収したのに続き、中国でも華電集団公司との合弁の保険会社設立を計画。今年中にも60億円程度を出資し、安い保険料で大きな保障を受けられる「掛け捨て型」商品の販売など、本格的な参入を目指している。
住友生命も高成長が見込まれるベトナムに昨年末に拠点を開設、現地銀行と保険事業での提携に動いている。
国内市場は構造的な縮小
生命保険業界は、少子高齢化や人口減少によって保有契約高が14年連続で減少するなど、構造的に国内市場の縮小に直面している。そうした中で、歴史的な円高により海外投資の負担が軽減されることから、今後も各社は海外企業に対して 大型の買収などを積極的に仕掛けることになりそうだ。
自己資本比率の引き上げなど規制強化に対応し欧米金融機関が、非中核部門や資産の一部売却に動いていることも日本勢のM&Aには追い風だ。
だが、それがそのまま、各社の業績に直結する保証はない。
確かに足元の業績 は、銀行窓口での「一時払い終身保険」の販売好調など概ね堅調だが、国際的な 金融市場の混乱で運用環境が悪化し、2011年9月中間決算では大手4社だけで計 3000億円近い有価証券評価損を計上した。
欧州危機の影響は中国を含めた新興国市場にも波及し、輸出の減少などを通じて一時的に成長が鈍る恐れもある。生保業界の先行きは「欧州危機の動向次第」(大手生保)のようだ。