「(首相退陣後は)次の選挙には出ない」と明言しながら後にあっさり撤回し、政権批判を続けている鳩山由紀夫・元首相が、今度は自身が掲げる「友愛」の精神を広める目的で、「由紀夫」から「友紀夫」へ「改名宣言」をした。
しかし、「引退宣言」撤回の「前科」のせいか、この「改名宣言」も「どうせ、いずれ撤回するのでは?」とする皮肉な見解が、ネットや一部マスコミから寄せられている。
産経「またも『議員辞職』をちらつかせた軽率な発言」
鳩山由紀夫・元首相は2012年2月4日、北海道・室蘭市であった後援会会合で、自身の名前に「友愛」の「友」の字を入れ、「友紀夫」としたいと表明した。会合後、記者らに「戸籍から変えるか、ニックネームにするか」と話し、具体的な「改名」方法は今後詰めていく考えを示した。
この「改名」ニュースを伝えた朝日新聞(2月5日付朝刊)の記事は、「だが、かつて政界引退表明を撤回したこともあるだけに、実際に改名に踏み切るかどうかは不明だ」と皮肉った。
ネットのツイッターでも「また(改名宣言も)撤回するのでは」と冷めた見方が並んでいる。ひところは鳩山元首相の言動に対し、「お前が言うな」と袋だたき状態が続いていたが、今や怒りを通り越してあきれている、「またか」、といった調子が強いようだ。
政策関連でも同様の皮肉が浴びせられている。郵政改革に関する鳩山元首相の1月26日の発言について、産経新聞は「またも『議員辞職』をちらつかせた軽率な発言といえそうだ」と指摘した。「引退撤回」を念頭に置いた記事だ。
郵政関係者会合で、「(通常国会中の改革が)できなかったら議員バッジを外せ、みんなで外そうというくらいの気概で…」と述べたことを受けた記事だ。
鳩山元首相へ「皮肉」が飛んでくるのは政治分野からだけではない。
鳩山元首相は2011年12月、「福島第1原発を国有化せよ」とする論評を英科学雑誌「ネイチャー」に寄稿、発表した。平智之衆院議員(民主党)との連名だ。
これに対し、「鳩山さん ネイチャー論文ヘンです」との記事が載ったのは、朝日新聞(2月1日付朝刊)の「記者有論」欄だ。筆書は高橋真理子・編集委員。科学部次長や論説委員(科学技術など担当)を経験した科学畑の記者だ。
「後援会からの慰留」理由に「引退撤回」
「ネイチャー」は世界的に権威がある雑誌だけに、多くの科学者が目を通しただろうとしつつ、「中身を読んで首をかしげる人が多かったのではないか。何しろ、科学に基づかない記述が目につくのである」と指摘した。
「(福島第1原発で3月下旬に)再臨界が起きたことを示す物質が存在したと結論づけた」とする鳩山氏らの主張については、「主張の是非以前に、根拠を示さず結論だけ書くやり方が科学のルールに反する」と切り捨てている。まるで「お話にならない」と言わんばかりの書きっぷりだ。
「鳩山論評」の出来映えはともかく、日本の元首相が世界に向けて「福島第1原発を国有化せよ」とのアピールを発信したことには変わりなく、野田政権にしてみれば、国有化への賛否は別にして、「余計な発言を…」と頭が痛いことだろう。
そもそも、2010年6月にテレビカメラの前で、「総理たるもの、その影響力をその後行使しては、行使し過ぎてはいけない」「従って、私は次の総選挙に出馬は致しません」と断言したのは、首相退陣表明後の鳩山氏だ。09年の政権交代選挙の際にも同じことを訴えていた。
しかし、「後援会からの慰留」などを理由に、わずか1か月後の2010年7月には「引退宣言をとりあえず撤回」し、12月に「議員続投宣言」をして引退を完全撤回した。
鳩山元首相は、今も野田政権が進める消費税率引き上げに反対する考えを何度も表明するなど政権批判を続けている。まさに、かつて自身が批判した「(首相経験者による)政治の混乱」を体現している形だ。
民主党政調会長代行の仙谷由人は2012年2月5日、NHK番組で、鳩山元首相らによる消費税増税批判について、「(財源不足への)危機感が弱すぎるのでないか」と、不愉快そうに逆批判した。