支援の届きにくい「みなし仮設」とは
東日本大震災の被災地では、地震や津波で多くの家屋に被害が出ました。岩手、宮城、福島を合わせて、全壊建物は約 12万戸、半壊は約20万戸とされています。自宅に住めなくなった方々のために、これらの県では仮設住宅が約5万戸建設されました。一方で、ほぼこれと同数の約5万世帯が、「みなし仮設」と呼ばれる民間住宅に暮らしています。これは、自宅に住めなくなった被災者が自ら契約した民間の賃貸住宅について、国と県がその必要性を認め、家賃を負担しているものです。
仮設住宅では被災者が集まって暮らしているため、行政も実態を把握しやすく、支援物資の配付は比較的容易で、入居者同士の交流も盛んです。これに対して、みなし仮設は広範囲に1戸ずつ点在しており、行政やNGOによる支援が行きわたらないこと、被災者が孤立しがちなことなどが課題となっています。
難民を助ける会を含む8つの支援団体は、宮城県内全域のみなし仮設に暮らす方々約26,000世帯を対象に、手分けして暖房器具の配付を行っています。難民を助ける会は仙台市を含む18の市町村を担当し、合計約9,000世帯にファンヒーターの配付を進めています。 2012年1月20日までに、14市町村での配付が完了しました。本格的な冬を迎えた東北で、仮設住宅には行政や支援団体から暖房器具が届けられていますが、みなし仮設に暮らす方々の中には、こたつ一つで寒さをしのいでいる方もいました。
■難民を助ける会が暖房器具の配付を担当している市町村
宮城県仙台市、柴田町、松島町、美里町、涌谷町、加美町、丸森町、村田町、川崎町、栗原市、蔵王町、七ヶ宿町、大河原町、利府町、大和町、大郷町、富谷町、大衡村
慣れない家に一人で暮らすお年寄りが暖かく冬を過ごせるように
12月20日、宮城県村田町の「みなし仮設」に一人で暮らす 佐山清子さん(80歳)にファンヒーターをお届けしました。自宅は震災で瓦が落ちたり床が抜けるなどの被害を受け、修理なしには暮らせない状態ですが、半壊の認定はされなかったので、修理費の援助はほとんど受けられません。しかし解体するには数百万円の費用がかかります。年金暮らしの佐山さんにはそのお金はありません。
結局佐山さんは昨年4月、町内の雇用促進住宅に移りました。お邪魔してお話を伺うと、足が悪く出歩くのが難しいこと、体の調子がよくないこと、そしてこの家は2年間で出なくてはいけないことなど、様々な不安を口にされました。暖房器具はこたつ一つしかないとのこと。今回のファンヒーターが全ての不安を解消してくれるわけではないのでしょうが、せめて寒さの心配なく、健康に冬を過ごしていただきたいと願わずにいられません。支援の手の届きにくい方々のために、今後も難民を助ける会では活動を続けていきます。
(難民を助ける会 仙台事務所 蛯名 誠)
宮城県松島町の高田さん。海沿いにあったご自宅には
津波が押し寄せ、今は更地だといいます。
「寒くなってきたのにエアコンの調子が悪く、ファンヒーターは助かります。」
(2011年12月22日、左は難民を助ける会仙台事務所の小菅健太郎)
※この活動は国内外の皆さまのあたたかいご寄付に加え、AmeriCaresおよびInternational Rescue Committeeの助成金により実施しております。
認定NPO法人 難民を助ける会
1979年、インドシナ難民を支援するために、政治・思想・宗教に偏らない市民団体として日本で設立された国際NGOです。
2011年3月11日に発生した東日本大震災を受けて、地震発生当日より活動を開始。宮城県仙台市と岩手県盛岡市に事務所を構え、緊急・復興支援を行っています。
活動にあたっては、特に支援から取り残されがちな障害者や高齢者、在宅避難者、離島の住民などを重点的に支援しています。食料や家電などの物資の配布、炊き出し、医師と看護師による巡回診療など、多面的な活動を続けています。
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