ガレキの不法投棄 「自分さえよければ」の風潮【福島・いわき発】

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   「ここにガレキ・ゴミを捨てないでください 福島県」(=写真)。新舞子海岸(夏井川河口付近)の黒松林の中を走る道路に看板が立っている。いつから立っているのだろう。昨年8月中旬、夏井川河口にかかる磐城舞子橋を見に行ったときには、橋はまだ通れず、立て看もなかった(「昨年」と書かなくてはならないことがちょっと切ない)。


   3・11の大地震で地盤が沈下し、磐城舞子橋と道路の間に段差ができた。8月中旬以降、応急工事がなされ、通行が再開された。9月早々には橋を通ったという話がネット上にあらわれたから、立て看が設けられたのはそのあとだろう。


   新舞子の黒松林は防風と防潮を兼ねる。3・11に大津波をかぶりながらも、その勢いをそいでくれた。海水をかぶって根腐れをおこしたのか、茶髪になった木もあるが、おおかたはまだ原状を維持している。


   3・11でいったんは抜けた夏井川の河口も、再び砂で閉塞した。横川を逆流して仁井田川から太平洋へ注いでいる。河口を開こうという県いわき建設事務所の試みは、今のところすべて無効だ。


   それはさておき――。黒松林に放射線量の高いところがあるという話を聞いた。県が設置した立て看と関連があるのではないか。しばらく気になっていたので、きのう(2月1日)朝、思い切って河口へ出かけた。


   車で夏井川の堤防を行く。ラジコン飛行場の手前で川面が凍っていた。ガラスのように透明だから、さわれば割れるだろう。でも、随分久しぶりに両岸まで氷が張っているのを見た。その下流、ハクチョウが6羽、8羽、9羽と小グループになって羽を休めている。マガモたちも寄り集まっている。ウミウがその間でさかんに潜水を繰り返していた。


   河口左岸の一角に足を運び、不法投棄された「ガレキ・ゴミ」を見る。焼却灰、空き瓶、コンクリートがら、テレビ、廃材……。家庭から出たと思われるもの、業者が捨てたと思われるものが交じっている。焼却灰は毎時1.16マイクロシーベルトだった。これだけが群を抜いて高かった。


   東日本大震災時に騒動も略奪もおきなかった。日本人の我慢強さ、忍耐力、助け合い・思いやりの精神に敬意を表する――といった称賛の声が世界から寄せられた。光と陰で言えば、日本人の光の部分が際立った。


   しかし、光が際立てば闇もまた際立つ。住民が原発避難を余儀なくされた双葉郡内での空き巣の発生件数。報道によれば、2010年は1年間でわずか20件だったのが、2011年には594件と約30倍に急増した。広野町の知人も被害に遭った。


   大災害だからこそ人々が助け合う一方で、人の不幸につけこむ人間も、散っていたクモの子が元に戻るように現れた、ということをこの数字は示す。海岸林の不法投棄も「自分さえよければ」の風潮が広がっていることを浮き彫りにする。光だけ見ているわけにはいかない。

(タカじい)



タカじい
「出身は阿武隈高地、入身はいわき市」と思い定めているジャーナリスト。 ケツメイシの「ドライブ」と焼酎の「田苑」を愛し、江戸時代後期の俳諧研究と地ネギ(三春ネギ)のルーツ調べが趣味の団塊男です。週末には夏井川渓谷で家庭菜園と山菜・キノコ採りを楽しんでいます。
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